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壮大な予告編? 『チェ 28歳の革命』 [映画]

 *映画の内容に触れてますので、未見の方は注意して下さい。

 前にフィデル・カストロのドキュメンタリー映画を見たことはあるんですが、ゲバラに関しては詳しい伝記などを読んだことはなかった。それくらいの知識で見に行くと、映画の中で時系列が行ったり来たりするので、国連でのゲバラの迫真の演説シーンに込められた意味とか背景が分かりづらかった気がします。パンフレットにその辺の説明が入っているので、あらすじのネタバレはこの映画の場合少ないと思われますので、待ち時間に先にパンフレットを買って読んでおくのもいいかもしれません。配給会社の人も同じようなことを考えたのか、上映開始の直前、簡単な人物説明のような映像が入ります。

  28歳の革命.jpg (写真はパンフレット)

 映画は全編スペイン語で進行。チェ・ゲバラがメキシコでカストロと出会い、キューバの軍事独裁政権打倒で意気投合し、ゲリラ部隊を率いて民衆を味方につけ、軍事政権を倒すまでと、キューバ革命成功後、政府代表としてアメリカへ渡り、国連で革命の意義と新生キューバの正当性を堂々と主張する演説が交互に進みます。
 監督はアメリカの麻薬戦争をドキュメンタリータッチで描いた『トラフィック』でアカデミー賞を受賞したスティーブン・ソダーバーグなんで、入念なリサーチを重ねたドキュメンタリーっぽい硬質な映画です。2時間を超える結構長い映画なんですが、ゲバラ役のベニチオ・デル・トロの入魂の演技が素晴らしく、見ていてもだれることは一切なかったです。

 パンフの中のインタビューで監督自身が答えているんですが、最初の構想では描きたかったのはボリビアに渡って革命闘争に失敗し、非業の死を迎える部分だったとのこと。それを描くにあたって、どうしてもキューバ革命に身を投じた過程を描く必要があった、とのことでした。そういう意味では壮大な予告編とも言えるものかもしれませんが、裕福な家の出身で医者として何不自由なく暮らせる人生を捨てて、独裁政権に抑圧されるキューバの人のために人生を捧げたゲバラが、持病の喘息に苦しみながらゲリラ戦を闘い、革命家として成長していく過程が生き生きと描かれています。

 映画の中のゲバラは、農民出身の兵士に社会的なルールや読み書き、数学を教え、勝利に酔う部下の略奪や横暴も厳しく戒める理想のリーダーです。入念なリサーチに基づき賛美も否定もしていない、とのことなので、ほぼ真実の姿が描かれているんでしょう。ゲバラの高潔な人柄と指導力があっという間に民衆の支持を集めるのですが、欲望に弱く、堕落しやすく、思想も移ろいやすい残酷な大衆に向かって、ひとり孤高の理想を掲げるゲバラが痛々しくもあります。
 革命成功後のキューバにとどまれば、何不自由ない暮らしが待っていたはず。それを捨てて、再び見知らぬ国の大衆のために命を捧げたのはなぜなのか。誇大妄想狂や夢想家だったのか、それとも傑出した大衆のリーダーだったのか、その辺が続編を見れば分かるのでしょうか。

 ゲバラがこの世から去っても、政治的、実務的なバランス感覚に優れたカストロ(劇中にそういう描写が出て来ます)によってキューバは現在もちゃんと国として存在していますが、冷戦が終わっても世界の人々は紛争や侵略を繰り返しており、人の愚かさを良識や理想で束ねるのは不可能なのかもしれません。それでも、学校の先生みたいに、敗走した政府軍の兵士から車を奪ったゲリラ兵を叱るゲバラを見ていると、人に対する信頼や理想を最後まで捨てなかった人物だったのだろうか、などと思いました。


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『ワールド・オブ・ライズ』 [映画]

 *映画の内容に触れてますので、未見の方は注意して下さい。

 スパイアクションものということで、週刊誌の映画評もそんなに悪くなかったので期待作でしたが…。リドリー・スコットってソマリア人がショッカーの戦闘員並みにバラバラ殺される場面を延々とやる『ブラックホーク・ダウン』の監督さんでしたね。

 お話は…。アメリカやヨーロッパで連続爆破テロを起こしたイスラム原理主義のテロリスト集団のリーダーを追いかけるCIAのエージェント、レオナルド・ディカプリオが自分は危険に身をさらさずに無茶苦茶な指令を出す上司ラッセル・クロウとヨルダンの諜報機関との駆け引きの中で翻弄されながら、イラン人の美人看護師と恋に落ちたりしつつ、テロ集団を追い詰める…てな感じです。

 劇中、ディカプリオは上司のラッセル・クロウと対立して情報提供者をかくまおうとしたり、仲間を助けようとしたりと、それなりに良い奴なんですけど、テロ集団のリーダーをおびき出すため、トルコの軍事施設を使って偽装の爆破テロ事件を起こし、背後に大金が動いているとの偽情報を流して、無実の一般人を新興テロリスト集団のリーダーに仕立て上げるという無茶苦茶な作戦を考案する。
 その偽装テロに本物の死体を使ったり、架空の銀行の建物を発注したり大掛かりな仕掛けの割には餌に使った人物はあっさり本物のテロ集団に殺されるしで、ずさんで非人道的な作戦なのに、失敗してもディカプリオはけろっとしてます。劇中では善玉のはずなんですけど、「お前のせいで何人死んでるんだよ」って突っ込むところです。
 その割には病院で知り合った美人のイラン人看護師(本物のイランの有名女優さんなんだそうです)をナンパしたり、その彼女がさらわれると今度は自分と人質交換を申し出たりと、何だかCIAの凄腕スパイの割に行動が緩くていい加減な感じがします。

 ラッセル・クロウが演じるCIAの上司は協力者が殺されても全然情けをかけない非情で嫌な奴だし、善玉役のはずのディカプリオが冷静に考えると実は同じくらい非情だし(無実の人を巻き込んで死に追いやる)、映画はアメリカやその利益を代弁するCIAの傲慢さを描いているように見えます。でも、最後まで見てると、劇中の悪玉のテロ集団のリーダーは実は金のために動いてるただの極悪人なので、結局、「アラブのテロリストは悪い奴なんだな。多少ひどいことをやってもアメリカがやっつけなきゃ駄目なんだな」ということが言いたいのかなという気がしてきます。

 戦争や民族紛争のむなしさを描いているようでいて、外国でアメリカ兵がソマリア人をひたすら殺しまくっている状況を描いてる『ブラックホーク・ダウン』と何だか似てるんですよね。
 ディカプリオがテロ集団に捕まって拷問される場面はメチャメチャ痛そうなので、そういうのに弱い人は要注意です。ヨルダンの情報機関の幹部役の人がアンディ・ガルシアを若くしたような感じで、劇中でも凄腕だしかなり格好良かったです(すごく非情で怖いけど)。

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期待通り。『トロピック・サンダー』 [映画]

 *映画のあらすじに触れてますので、未見の方は注意して下さい。

 世界同時不況で会社はどうなるかわかんないし、上司には理不尽なこと言われるし、クリスマスは近いし…ってこれは関係ないですが、こんな時はスカッと笑える映画ってことで。アメリカでは大ヒットしたそうですが、日本ではこの連休の真ん中なのにガッラガラ。おもしろいんだけどな~。ちょっとデート映画には向かないかもしれませんが…。つうか笑いもブラック風味ですれすれまで攻めた(?)感じで、日本ではヒットしないかも…。

   トロピックサンダー.jpg (写真はパンフレット)

 お話は…。落ち目のアクションスター、タグ・スピードマン(ベン・スティラー)はベトナム帰還兵(ニック・ノルティ)のベストセラー「トロピック・サンダー」の映画化主演に燃えていた。知的障害者の演技でアカデミー賞を狙った映画が大コケしたが、実はのどから手が出るほどオスカーが欲しい映画馬鹿でもあった。
 
共演はアカデミー受賞5回を誇るカーク・ラザラス(ロバート・ダウニーjr)。カークもまた、黒人兵を演じるために皮膚を黒くする手術をするほどの役者馬鹿だった。劇中におならをするギャグしかとりえがなく、しかし実は演技派への変身を望んでいるジェフ・ポートノイ(ジャック・ブラック)を加えた主要キャスト3人と黒人ラッパー(名前はアルパ・チーノ)、新人俳優を交えてベトナムの奥地でロケが始まる。
 ところが、映画は予算を大幅にオーバー。映画会社の重役(某大物ハリウッドスター)はイギリス人監督を罵倒しまくる。切羽詰った監督は原作者の帰還兵のアイデアで役者をベトナム奥地へ放り出してゲリラ的撮影を試みる。ところがタグらは魔の三角地帯と呼ばれる麻薬密造グループの支配地域へ迷い込み、武装グループと本当に戦うはめになる…てな感じです。

 冒頭、本物の映画会社のロゴマークを使って、タグ・スピードマンの主演映画の架空の予告編(トレーラーってやつですね)が立て続けに流れ、まずその下らなさで笑えます。ドリームワークスの三日月で釣りをする男の子の映像が出て、これもギャグか? と思ってたら、それは本物でした…。
 有名俳優はカメオ出演でたくさん出てきます。某スパイダーマンとか、一瞬から台詞ありの人まで、たくさん出てきます。ちょっと天然のエージェントも結構な有名俳優で、映画会社役員の某俳優といい、主演の3人といい、主役級の人がたくさん出てきて、それなのに、映画はすごく下らなくて、笑いっぱなしでした。

 有名戦争映画のパロディも出てきます。『プラトーン』のウィレム・デフォーの有名なシーンや『地獄の黙示録』、『プライベート・ライアン』もちょっと入ってるかな。麻薬密造グループの身代金要求を冷たく突き放し、人の命さえも金勘定に変えてしまう映画会社の重役は、タグらの無茶苦茶な闘いが大ヒット映画に化け、大金を稼いでディスコダンスを踊り狂います。
 徹頭徹尾、ハリウッド映画界の権威主義や拝金主義、薄っぺらな良識とかを小馬鹿にしまくっていて、こんなんやって映画界の人が怒らないのかな? と思うほどでした。
 とか言いながら、最後まで見終わって、こんな映画を大ヒットさせた観客が実はハリウッドの仕掛けに逆にまんまと乗せられたってことなのかな? とか思いながらラストの某大物俳優のヘンテコなダンスを見てました。

 いや~しかし、ある意味、ホントに贅沢な映画です。有名俳優が結構出てるのに、それに何の意味も与えず、最後まで下らないことやってますから。前にベン・スティラーが出てた『ミート・ザ・ペアレンツ2』って映画見た時も思いましたけど、アメリカの映画界って奥が深い。日本で
演技派で主役級の人に変な格好させて、お下劣なコメディや下らないパロディ映画なんかカネかけてなかなかつくれないですよね。


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元気が出ます。『マルタのやさしい刺繍』 [映画]

 *映画の内容に触れてますので、未見の方は注意して下さい。

 ちょっとシンドめの出張から帰ってきて、明日からまた出張。そんなクサクサした気分の時はやっぱりちょっと心温まる映画が見たいものです。予告編をどこかで見て、ちょっと気になっていた『マルタのやさしい刺繍』を代休もらったんで見てきました。

 お話は…。スイスの小さな村に暮らす80歳のマルタ(シュテファニー・グラーザー)は夫に先立たれ、落ち込んだ気分のまま暮らしていた。そんなマルタを心配する女友達3人。ほかの3人より少し若いリージは昔、アメリカへ恋人を追っていったことがあるシングルマザー。ハンニは体が不自由になった夫の世話と農場の手伝いに明け暮れる主婦。やはり夫に先立たれたフリーダは老人ホームで寂しく暮らす未亡人。
 気分がふさいだままのマルタを心配したリージが、年に一度の村の大イベントの合唱コンテストの団旗の補修をマルタに頼むことを思いつく。若い頃、マルタは刺繍と裁縫を学んでいて、パリのシャンゼリゼ通りに自分でデザインしたランジェリー店を出すのが夢だった。しかし、夫の勧めで裁縫を諦め、田舎の村に嫁いで小さな雑貨屋を手伝ってきた。旗の修理のための生地を買い出しに出たベルンで、マルタはランジェリー店を出す夢を追いかけてみたくなる…。保守的な、男性中心社会の田舎の小さな村で、マルタたちは頭の固い男たちに批判され、嘲笑されるんですが、やがて少しずつ周囲も変わり始めるのです。

  やさしい刺繍.jpg (パンフ買いましたが、これは劇場にあったチラシ)

 主演女優のシュテファニー・グラーザーさんは何と88歳。長くスイスで脇役として活躍、これが初の主演作だそうです。他の女優さんもリージ以外はたぶん70歳代の半ばから後半ぐらいの人ばかりです。一時、スローフードって言葉が流行りましたけど、この映画は言ってみれば、「スロー映画」。お話も分かりやすく、ゆっくり、のんびり進んでいきます。変なひねりもありません。

 頭の固い男たちは女たちが少しずつ変わり始めるのがおもしろくないのか、リージの小さなプライドを粉々にするようなひどい言葉を投げつけたり、マルタの店にいろんな嫌がらせをするんですけど、全然へこたれないのです。
 リージには思わぬ不幸が襲うんですけど、フリーダは自分に好意を抱いているらしい男性の気持ちを受け入れる気になるし、ハンニは施設に入れられそうになる夫のために車の免許を取ったりと、直面していた困難を乗り越えたり、少しずつ変わり始める。
 ほんの少しの勇気があればそれができるけど、なかなかできない。人の弱さって、そんなものですよね。マルタだってそうなんですけど、親友たちの助けを借りて自分のやりたかったことをやり遂げる。

 自分には、こんなに長く付き合える友達が年老いた時にそばにいるかどうか分かりませんが、女の友情というのもいいものだなあ、と見ていて思いました。スイスの風景がとてもきれいで、笑えるシーンもあるし、ちょっと涙腺が危うかったり、じんわりのんびりしたいい映画でした。
 たった28日間で撮影されたとかで、エンドロールも、こまごまとしたいろんな役やらスタッフまで全部流れるハリウッド映画に比べて、めっちゃ短かったです。スイスでは大ヒットしたそうです。

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いまひとつ…。『X-ファイル 真実を求めて』 [映画]

 *映画の内容に触れてますので、未見の方は注意して下さい。

 Xファイル、昔、流行りました。一番おもしろかったのはシーズン1かなあ。超常現象とか超能力者の犯罪者に挑んでいく一話完結の話で、毎回結構おもしろかった。UFOとか政府の陰謀とかが出てきてから少しずつお話が拡散していき、だんだん収拾がつかなくなってきて、やがてモルダー役のデヴィッド・ドゥカブニーが降板してからは見てません。
 で、今作もアメリカでは大コケしたらしくて、日本でもシネコンでやってたものの、小さな劇場をあてがわれてました。でも、その割には混んでたかな?

 え~お話は…。女性のFBI捜査官が行方不明になった事件をめぐって、霊能者と名乗る神父が事件の手がかりとなる男の遺体の一部を発見する。超常現象を伴う捜査の見通しを立てるために急きょFBIに呼び戻されるモルダー(どうやらTVエピソードの最後の方でFBIを追われた?)。モルダーを呼び戻す役を頼まれるのが、やっぱりFBIを辞めて医師に復帰してるスカリー。
 名コンビで再び霊能者の能力の信憑性を捜査する2人。次々に被害者の居場所を突き止める神父は犯人の共犯者なのか、それとも…。てな感じです。


 エンドロールの最後の方で、再び2人がちらっと姿を見せます。それと、モルダーとスカリーはずっと恋人になりそうでならなかったんですけど、ラストシーンではいい場面がありました。エンドロールの後の場面(解釈によっては、もう事件からは手を引いた、とも思える)と併せると、これでホントに最後なのかな? という気も。TVシリーズからは10年くらい経ってるような気もしますけど、2人ともそんなに老けてないし、まだバリバリ行けそうに思うんだけど…。


 でも、映画自体はいまひとつでした。う~ん…テレビのスペシャル版でもいいかなという感じ。

 以下、マジでネタバレです。

ネタバレの続き。


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どっかで見たような…。『イーグル・アイ』 [映画]

 *映画のあらすじに触れてますので、未見の方はご注意を。

 製作総指揮がスピルバーグとか、制作費が100億円とか、アメリカで結構ヒットしたとか…等々の情報で、ちょっと期待作でしたが……。まあまあおもしろかったけど、アイデアは何だか月並みな感じでした。

  イーグルアイ.jpg (写真はパンフレット。まさか…あの映画を部分的にパクってるのか? と思い、それに触れてるかと思って買ってみました)

 お話は…。ビデオ店で働くジェリー・ショー(シャイア・ラブーフ)の携帯に突然女の声で電話が入る。「今すぐ逃げなさい」。何故か銀行のATMには莫大な金額が振り込まれ、自宅には戦闘機のマニュアルに自動小銃、化学兵器の原料が何者かによって届けられる。FBIに踏み込まれ、テロリストの嫌疑がかけられて逮捕されるジェリー。
 同じ頃、友達とバーで酒を飲んでいたバツイチのシングルマザー、レイチェル・ホロマン(ミシェル・モナハン)の携帯にも突然電話が。いきなりマクドナルドの店の広告ビデオに息子の映像が映り、女の声で「息子を死なせたくなかったら、ポルシェカイエンに乗りなさい」と指示が。2人は女の正体も自分たちが選ばれた理由も行動の目的も分からないまま、電話の女の声の指示に従って決死の逃避行に巻き込まれる。


 ジェリーとレイチェルを追い掛けるパトカーは信号に妨害され、自動操縦のクレーンに襲われる。何かしら危険なものらしいアタッシェを強奪させられたり、空軍機に忍び込んだりと、2人はあらゆるコンピューターに侵入できるらしい電話の女の助けを借りて、FBIと軍の追跡をかわしてどんどん逃げます。どうしてこの2人が選ばれたのか、どうやらここがこの映画のオチらしい。このオチは一応、「なるほど!」と思わせる。
 冒頭、アラブ人らしいテロリストのキャンプを米軍が無人機で攻撃する場面があるんですが、これも一応、後半のお話の伏線になっているなど、まあまあ凝ったあらすじなんですけど…。

 万能の能力を持つ女の正体は結構早い段階で分かります。しかし、その正体って…。
ここからちょっとネタバレ入ります。読む人は注意です。
 

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うっかりしてると涙腺が…。『僕らのミライへ逆回転』 [映画]

 *映画の内容に触れてますので、未見の方はご注意を。

 ジャック・ブラックが出てるので、例によってお下劣ギャグ連発のナンセンスなコメディなのかな? と思わせておいて、ラストの方ではうっかりしてると涙腺が危うい不思議な映画でした。

   僕らのミライ.jpg (写真はパンフレット。原題は『BE KIND REWIND』「ビデオを返す時は巻き戻しておいてね」という意味でレンタルビデオ屋さんによく張ってある言葉だそうです。原題のままの方がしっくりする気がしますね)

 ニュージャージーの小さな街でフレッチャー(ダニー・グローバー)が経営するレンタルビデオ店は時代遅れのVHSビデオしかなく、名作映画は置いてあるものの、最新のブロックバスター映画はほとんど置いておらず、全然儲かっていなかった。店は地元出身の伝説のジャズピアニスト、ファッツ・ウォーラーゆかりの場所で、街のシネマファンやアイスを買いに来る子供にとっては憩いの場所。しかし、市は市営住宅を建てるため、立ち退きを迫っていた。
 
トレーラーハウスで暮らすジェリー(ジャック・ブラック)は変電所の電磁波に自分が苦しめられていると信じていた。ある日、ビデオ店の店員マイク(モス・デフ)と一緒に変電所を襲撃するが失敗に終わり、ジェリーは強烈な電磁波を全身に浴びて、強い磁気を帯びてしまう。
 そうとは知らず、ジェリーは磁石の体で店の中をうろつき回り、レンタル用ビデオの映像をすべて消してしまう。フレッチャーはファッツの没後60年の記念イベントに出るとウソをついて、店を救うため、旅行先で大規模チェーンのDVDレンタル店を偵察していた。留守を預かるマイクはレンタル用ビデオが駄目になったことに困り、ジェリーと撮影した手作りリメイク版を代わりに客にレンタルして急場をしのごうとする…てなお話。

 「ゴーストバスターズ」を借りに来たなじみ客(ミア・ファロー)のために、ウルトラローテクなゴーストバスターズを撮るんですが、その自作映画が近所で評判となり、店が繁盛し始める。調子に乗って、「ラッシュアワー2」とか「2001年宇宙の旅」「ロボコップ」…たくさんの名作やらヒット作を次々に自作でリメイクするんですけど、その撮影方法が超ローテクでおかしいです。

 ダニー・グローバーが偵察するチェーン店は似たような新作DVDばかりを大量に並べ(当然VHSなんか置いてない)、店員は名作映画に対する知識も皆無。劇中でジャック・ブラックらの作るリメイク作品が手作りな上にローテク撮影なのに人々の人気を集めるところといい、今の米国映画に対するちょっとした皮肉になってます。

 いよいよ立ち退きが迫り、映画会社のイヤミな弁護士(「ゴースト・バスターズ」に出てたシガニー・ウィーバーが出てきます)にリメイク作を廃棄され、店を残すための金策にも行き詰まり、どうしようもなくなった時、ある「作品」を撮影するアイデアを思いつきます。そして、それは映画好きな街の住民を巻き込んで行きますが、でも最後は…。この辺でちょっと涙腺が危ういかも。ジャック・ブラックもラストの方はおふざけを完全に封印してました。

 あらすじとはそれますが、『SATC』(見てないけど)がアメリカのバリバリの勝ち組の話とすると、この映画は完全な負け組の話。ロクに仕事もない小さな街から出るに出られず、DVDプレーヤーも買えずに古いVHSビデオで映画を楽しむ映画好きの街の人たちのお話。それも、ちょっと気取った不朽の名作じゃなくて、誰もが少し昔に映画館で見た作品ばっかりなので、親近感を感じるのかな?

 ジャック・ブラックのローテク撮影の仕方がハチャメチャなんですけど、いろんな映画が出てくるので、映画好きな人は楽しめるかもしれません。映画館から出てきた時、私の前を歩いていた男性の二人連れが「ニュー・シネマ・パラダイスにちょっと似てたなぁ」と語り合ってました。私もそれ、思いました。


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ドタバタでハッピーエンド。『ゲットスマート』 [映画]

 *映画の内容について触れてますので、未見の方はご注意を。

 ちょっと忙しかった仕事がひと段落するも、いろいろと腹立つことあったりと、クサクサした気分なので、ちょっと軽めの映画を。

 この映画はちょっと期待作だったかな。世界平和を守る秘密組織「コントロール」に所属する情報分析官スマート(スティーブ・カレル)は敏腕ながら、ちょっと抜けてて現場のエージェント試験を落ちてばかりいた。しかし、ある時、「コントロール」の本部が敵対する悪の組織「カオス」の襲撃を受け、秘密エージェント全員の顔がばれてしまう。そんな時、カオスがロシアから核ミサイル用の燃料を買ったとの情報が。もはや頼りになるのは現場経験のないスマートと、整形手術をしたばかりのエージェント99(アン・ハサウェイ)だけだった…てなお話です。

   ゲットスマート.jpg (写真はパンフレット)

 スマートはずっと現場でスパイ活動をするエージェントにあこがれてるんだけど、なかなか試験を通らない。ペーパーテストではいい点取るんだけど、上司には「君のような優秀な人は分析官から外せない」って(たぶん)ウソつかれて異動を見送られるんです。希望が通らないスマートが「僕は40過ぎた負け犬だ…」と言いながら落ち込むシーンはちょっと感情移入してしまいました…。大真面目に頑張るスマートが次々にいろんなドジを踏むところがかなりおかしいです。でも、何だかんだ言って、実はかなりな敏腕スパイだよ、という場面もちょこちょこあって、その辺は「オースティン・パワーズ」とかとちょっと違う。

 ロシアでのロケもあったり、カーチェイスやら派手な爆破シーンやら、本格的なスパイアクションなんですけど、目指す敵にはあっけなく遭遇できたり、ラスボスは全然スマートらの働きと違うところでやられたり、危機一髪の場面は簡単に脱したりと、割とお話はゆる~~い感じ。でも、アクションは激しいし、スマートがエージェント99のために命をかけて頑張るところはまあ、ちょっと真面目でいいところかも。
 もともとアメリカの人気テレビシリーズの「それ行け! スマート」を下敷きにしている映画らしくて、パンフによると車とか細かい小道具でオマージュを捧げているらしい。そのほか、今人気のテレビシリーズ「HEROES」の日本人俳優マシ・オカが結構いい脇役で出てるので、今後、どんどん映画にも進出してくるかもしれません。
 パンフによると、マシ・オカさんは実はかなりのインテリみたいで、専門の大学を出て最初は舞台装置とか特殊効果の方面でハリウッドの映画界に入ったそうです。どうしてアメリカで人気あるのか日本人の目から見るとよく分かりませんが、ルーシー・リューも日本人の感覚だとそう美人でもないのに人気ありますもんね。何かウケる要素があるんでしょうね。

 基本はお馬鹿コメディなんで笑い声もかなり上がってましたけど、そんなにギャグは下品でもなく、ラストはハッピーエンド。まあまあ楽しめたかな。

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吉祥寺と猫の映画。『グーグーだって猫である』 [映画]

 *映画の内容に触れてますので、未見の方は注意して下さい。

 ここ数日の激務と休日出勤で疲れて、平日に代休を取った私。で、そんな時はやっぱり癒し系映画ってことで。お茶の間で人気のハイテクギタリスト、マーティ・フリードマンも出てます。有名な原作らしいですが、読んでません。

 お話は…小泉今日子演じる人気少女漫画家麻子は長く飼っていた雌猫サヴァとの死別のショックで作品が描けなくなる。心配するアシスタントの上野樹里や森三中。やがて、麻子は新しく猫を飼う決心をする。家にやってきたのはアメリカンショートヘアの雄猫で、体にぐるぐるの渦巻き模様のある「グーグー」。
 グーグーとの生活で、麻子は創作意欲を取り戻す。謎めいた青年との出会いとか、上野樹里の彼氏とのドタバタとか、なぜか梅図かずおが出てきたりと、ちょっとオフビートな取りとめのないやり取りが続いたと思うと、麻子は重い病に倒れる。快方に向かわず、精神的にも病んでしまう麻子の前にある夜、死神が現れる。「あなたが会いたいと思っている人を連れてきた」と死神が麻子をカフェの中へいざなうと、そこには意外な人物が待っていた…。

   グーグー.jpg (パンフ買わなかったんで、映画館にあったチラシ)

 マーティは英会話教室の先生役。なぜかカメラ目線で話したりして、物語の狂言回しみたいな不思議な役です。DMCみたいなチョイ役かと思ったら、結構重要な役です。これは本格的な映画デビューと言えるのではないでしょうか。物語は東京の吉祥寺の美しい街並みの描写を交えながら進みます。私、中野・高円寺界隈に10年以上住んでたんですけど、吉祥寺がこんなにお洒落な街とはついぞ知りませんでした~。もっと遊びに行けば良かった…。

 前半のドタバタしたところは話が拡散しているようで意図がよく分からず、途中で帰りそうになりますけど、麻子が病に倒れるあたりから、ど~んと話は重くなり、死神の力を借りてある人物が麻子と再会し、思い出を語り合う場面は涙腺が危ういかも(『プライベート・ライアン』や『バルジ大作戦』で泣ける私は全然平気)。

 小泉今日子さんはアイドル時代を知る者としては、きれいなままだなぁという感じです。猫好きでちょっとインドア系の不思議ちゃん系かつ繊細な女性の役柄にはまってます。劇場はやっぱり猫好きっぽい不思議ちゃん系の若い女性が多かった。その中におっさんは私ともうひとりいましたが、そのおっさんは何故か、本編前の予告編の段階からいびきをかいて寝始めました(!?)。途中で、前の席の女性が起こしましたが、また寝てしまいます。睡眠時無呼吸症候群らしく(かなり太ってる)、途中で息が止まります。で、思い出したように、ブォ~といびきをかき始めます。で、エンドロールの前にそそくさと帰っていきました。何だったんだろう…。『グーグー』を見ながらグーグー寝てました(ダジャレ………ではなく、実話)。

 え~話が大きくそれましたが、映画ですが、人と暮らすペット(猫)は実は人と一緒にその人生の一部を歩んでいるんだよ、大切な一緒の時間を過ごしているんだよ、ってことがテーマなんでしょうか。感動する~とまでは行かず、うまく言えませんが、感動度で言うと(あくまで『Uボート』で泣ける私の場合ですが)くしゃみが出そうになって、途中で止まった感じというか。
 猫好きな人や吉祥寺に思い入れのある人(マーティのファンも)は見てもいいかもしれません。


 *番外…ストーリーに触れてますが、この映画、あまりストーリーがありません…。

 くしゃみが出そうで出ないような感じでエスカレーターを降りてきたら、一階下の映画館で全然違う映画やってました。どうせ休みだし、映画館をハシゴです。ロシアのカーアクション映画『ストリート・レーサー』。

  ストリートレーサー.jpg (写真はパンフレット)

 え~お話は元戦車兵のステパンが美人の走り屋と知り合い、ステパンが元彼と喧嘩をしていると、何故かロシアンマフィアの盗難車取引に巻き込まれ、そうこうしていると美人の彼女が何故かさらわれ、それを追いかけるためにカーチェイスをやってるうちに最後は悪者が殺される…というお話です。ロシアでは大ヒットしたそうですが…。
 もっと簡単に言うと、『ワイルド・スピード』、『TAXI』、『60セカンズ』を足して3で割った感じ(?)。

 冒頭、いきなり、何の脈絡もなく、ロシア軍の戦車T72(80?)が2台でレースをしてます。泥んこの演習場みたいなところをかなりの至近距離ででかい戦車が走り回ります。で、走り屋がレース(ゼロヨンとジムカーナを足して2で割ったような感じ)をやってるのが、何故か空軍の飛行場。そこへ、何と戦闘機が! たぶんスホーイのSU24フェンサーです。アフターバーナーはたぶんCGだと思いますが、機体は実機みたいに見えます。何だか分かりませんが、そこだけさすがロシアです。

 この映画、カースタントを『ボーン・スプレマシー』とかを手がけたロシア人スタントマンが担当したらしいんですが、肝心の車が全然速く見えないのが残念。ワイルド・スピードでもあったけど、運転席のNOSシステムのスイッチを入れると、いきなりスピードメーターがオーバー200キロに入るんだけど、見た感じ100キロ出てるかどうか。スピード感がない! アクションにはCG使ってないらしくて、実車でやってると、かなり危険なことやっててもあんな感じなのかもしれません。公道上だしね。
 ただし。出てくる車はフェラーリのほかはインプレッサやフェアレディ、MR-2そして、やっぱりFDのRX7も出てきます(悪役の元彼の愛車)。ロシアでもRX7売ってたんですね。つうか、世界中の若者に人気あるんですね。そこはちょっと良いところ(ストーリーと関係ないけど)。


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ちょっと消化不良かな。『幸せの1ページ』 [映画]

 *映画のあらすじに触れてますので、未見の方は注意して下さい。

 そんなわけで、ちょっとクサクサした気分の時は心温まる映画ってことで見てきました。『幸せの1ページ』。ジョディ・フォスターが久々のコメディに挑戦したとかの話題作でしたけど、新聞とか雑誌の映画評は今ひとつ。

 お話は…冒険活劇の人気作家、アレクサンドラ(ジョディ・フォスター)は作品の主人公とはまったく違った極度の潔癖性で外出恐怖症。執筆に行き詰まったアレクサンドラはふと目にとまった雑誌記事から、作品のヒントを求めて南の海の火山がある無人島に住む海洋生物学者ジャック(ジェラルド・バトラー)にEメールを出す。ジャックは11歳の娘、ニム(アビゲイル・ブレスリン)と暮らしながら研究に励んでいたが、大嵐に見舞われて遭難してしまう。
 アレクサンドラが書く冒険活劇の主人公アレックス・ローバー(ジェラルド・バトラー2役)の大ファンのニムは父親宛に来たアレックスのEメールを見て、助けを求める。家から郵便物を取りに出るにも尻込みするアレクサンドラが、自分の作品の大ファンの少女のためにわざわざ南の島まで旅をする…。

 ジョディ・フォスターはさすが演技派だけあって、ちょっと神経質でドジな作家役を楽しそうにやってます。で、彼女の作品のヒーロー、アレックス・ローバーが幻影となって姿を現し、くじけそうになるアレクサンドラをおちょくったり、励ましたりします。で、最後の方で、ニムが住む無人島にたどり着くと、アレックスは「俺とはもうお別れだ」と言って姿を消す。アレックスとニムの父親のジャックが同じ俳優だというのに最初は気付きませんでしたが、それに気付いた段階で、ラストが何となく分かります。

 で、まあ、おもしろいことはおもしろいし、良い俳優が出てるので、安心して見ていられますけど、最後の方までお父さんのジャックはひたすら遭難した船の上での格闘、アレクサンドラは珍道中のドタバタが続き、ニムはその間、一人きりで自然豊かな無人島にゴミと騒音をまき散らす金持ちの客船を撃退しようと奮闘したりと、お話がいまひとつしっくりまとまってない感じがします。
 必死の思いで無人島にやって来たアレクサンドラをニムはあっさり拒絶するし…と思ってたら和解し、でも、お父さんが帰ってこない…と思ってたら、沖に小さなイカダが! てな分かりやすい流れで一気にラストへ。アレクサンドラが心の中の幻のアレックス・ローバーと同じ顔をしたイケメンのお父さんと握手すると、次のシーンでは波打ち際を親子のように歩く3人の姿が…。ハッピーエンドだし、後味もいいんですが、ホロリとする場面がほしい人にはちょい物足りないかも。非常にヘンなこと書きますが、ホロリ度は『デトロイト・メタル・シティ』の方があったような…。

 『サイン』で小さなかわいい女の子、『リトル・ミス・サンシャイン』でぽっこりお腹の女の子をやってたアビゲイル・ブレスリンがもう立派な美少女って感じです。泣く演技とかすごく自然で、まさに天才子役ってやつなんでしょうね。どんな女優さんになっていくんでしょう。

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