いまひとつ…。『X-ファイル 真実を求めて』

　＊映画の内容に触れてますので、未見の方は注意して下さい。

　Xファイル、昔、流行りました。一番おもしろかったのはシーズン１かなあ。超常現象とか超能力者の犯罪者に挑んでいく一話完結の話で、毎回結構おもしろかった。UFOとか政府の陰謀とかが出てきてから少しずつお話が拡散していき、だんだん収拾がつかなくなってきて、やがてモルダー役のデヴィッド・ドゥカブニーが降板してからは見てません。
　で、今作もアメリカでは大コケしたらしくて、日本でもシネコンでやってたものの、小さな劇場をあてがわれてました。でも、その割には混んでたかな？

　え～お話は…。女性のFBI捜査官が行方不明になった事件をめぐって、霊能者と名乗る神父が事件の手がかりとなる男の遺体の一部を発見する。超常現象を伴う捜査の見通しを立てるために急きょFBIに呼び戻されるモルダー（どうやらTVエピソードの最後の方でFBIを追われた？）。モルダーを呼び戻す役を頼まれるのが、やっぱりFBIを辞めて医師に復帰してるスカリー。
　名コンビで再び霊能者の能力の信憑性を捜査する2人。次々に被害者の居場所を突き止める神父は犯人の共犯者なのか、それとも…。てな感じです。


　エンドロールの最後の方で、再び2人がちらっと姿を見せます。それと、モルダーとスカリーはずっと恋人になりそうでならなかったんですけど、ラストシーンではいい場面がありました。エンドロールの後の場面（解釈によっては、もう事件からは手を引いた、とも思える）と併せると、これでホントに最後なのかな？　という気も。TVシリーズからは10年くらい経ってるような気もしますけど、2人ともそんなに老けてないし、まだバリバリ行けそうに思うんだけど…。


　でも、映画自体はいまひとつでした。う～ん…テレビのスペシャル版でもいいかなという感じ。

　以下、マジでネタバレです。

　まず、今回はUFOも宇宙人も関係ナシ。Xファイルらしいところは神父の霊視能力の真実性なんだけど、その謎は事件とはまったく関係なく未解明のままあっさり終わってしまう（ということは霊能力は本物ということ？）。
　連続女性誘拐事件の真相は、簡単に言うと、ロシアのマッドサイエンティストが「頭移植」の実験のために次々に女性を誘拐し、性的に心の傷を負った（？）男（霊視能力者の神父は小児性愛嗜好があり、頭移植を受ける男はその被害者）に女性の体を移植する？　という話。でも、なんで男の頭に女の体を？

　〈追記…レスくれた方の内容を参考に〉
　レスをくれた方の解説によると、神父は自分と何らかのかかわりを持った人間との間で霊視能力を発揮する。女性を次々に誘拐していたのは臓器売買に手を染めていたロシア系の男で、一緒に暮らしているパートナーが神父の小児性愛嗜好の被害にあった男。そのパートナーが肺がんで余命が短くなったため、何らかの方法でロシアから外科医を呼び寄せ、次々に女性をさらってはその体だけをパートナーの男に移植していた…というあらすじ。神父の身体は犯人のパートナーの男といわば同調しているので、ほぼこん睡状態にある男の体が不調になるのに合わせて眼から血を流したり、心臓発作を起こしたりするのです。〈追記終わり〉

　おどろおどろしい描写が続くんですが、モルダーは霊視とはまったく関係ない地道な捜査で犯人を発見するし、スカリーがモルダーを助ける時に神父の予言が役立つくらいで、肝心の超常現象があまり事件と絡んでこないので、単なる猟奇犯罪ものみたいなお話になってる気がします。それに、ちょっと内容がエグすぎな感じもします。猟奇性にストーリー上の必然性が感じられない。

　それと…気のせいかもしれないが、頭移植？　なんてグロテスクで非科学的なことを何故かアメリカで？　人を次々に誘拐してまでやってるのがロシア人の科学者。FOXというと、アメリカでも超タカ派で知られるメディアグループなんで、最近国際的に発言力を強めつつあるロシアに対する保守派の嫌悪感みたいなものを下敷きにしてるのかな？

　★★★以下、ホントにホントのネタバレです。

　検索ワード「Xファイル　エンドロール」で来られる方が多いみたいなので、ひょっとして見られなかった人が知りたがってるんだろうということで、書きます。映画見てない人は以下は読まない方がいいですよ（私も見てから時間がたってるので、ちょっと記憶違いがあるかもしれません。その場合はすみません）。


　最後の方で、主治医として担当する難病の子供の辛い治療を進めるべきか（病院のエライ人は治療を中止してホスピスに入れるべきだと主張している。両親も子供が苦しむ姿を見て治療の続行が正しいのかどうか迷ってる）で悩むスカリー。スカリーの活躍で九死に一生を得たモルダーは「嫌になったら一緒に逃げよう」とスカリーに事実上のプロポーズ（？）をして抱きしめる。
　意を決して手術に臨むスカリーの姿…。子供が助かったかどうかは明確に描かれませんが、エンドロールは美しい海岸や広い海原の空撮映像が延々と続き、最後の方で小さな島に向かう手漕ぎのボートの上で手を振る男女2人がスクリーンに豆粒のように映ります。
　ボートをこぐ男性と空撮のヘリ（？）に向かって笑顔を見せる女性の雰囲気はモルダーとスカリー。人の心の闇の中を手探りで歩き回るような捜査官の日々に別れを告げ、2人で新たな人生のスタートを切った……という風にも見えます。

　このシリーズ（というかモルダーとスカリーのコンビ）のなが～いファンにはやっと安心できるラストシーンってことでしょうか。

コメント 13

Ｘ-ファイルかぁ！と思って気になっていました。スカリー、モルダー、懐かしいですね！でも霊能者のかかわりって、二人を呼び戻すほどのことなのでしょうか？宇宙ネタが手に負えなくて呼び出すならわかりますけど・・・。
by duke (2008-11-09 01:00) 

ををを〜〜〜！
しまうまさん！！！！
もうご覧になったのですね！
私ももう観ました♪

私はこのドラマ大好きで
アメリカのTVドラマにどっぷりはまるきっかけになったとも言えるドラマです。
同時に、私がFBIの捜査官に死ぬまでに一度会ってみたい！
という夢（妄想）を抱くようになった決定打とも言えます。
これ以前には「ツインピークス」でFBI捜査官にちょっと惹かれてたんですが。

もしシリーズ最後までご覧になってなかったら
スカリーとモルダーの関係って最後どうなってたかご存じですか？
ネタバレになるんであえて書きませんが・・・。
でもほんと、スカリーきれいなままでうれしかった（笑）。

＞UFOとか政府の陰謀とかが出てきてから少しずつお話が拡散していき、だんだん収拾がつかなくなってきて

そうですよね〜。
あれがものすごーーーーい混沌としてて
私も何回か観るまでよく内容もわからなかったです。
それに私「肺ガン男」が生理的に嫌いだったんですよ・・・。

＞でも、なんで男の頭に女の体を？

わは♪ほんまや〜。
なんか、すごい珍しい血液型だということだったんで
その血液型の男性を捜せなかったのかなあ？
私は、なぜあの牧師が目から血を出すのかわからなかった。

＞霊視とはまったく関係ない地道な捜査で犯人を発見するし

しまうまさん、ほんとするどいな〜。

＞最近国際的に発言力を強めつつあるロシアに対する保守派の嫌悪感みたいなものを下敷きにしてるのかな？

しまうまさん、ほんとにほんとにすごい〜〜！！！！
そこまで考えるなんて！！！
私なんて「きゃーモルダー♪スカリー♪」っていうレベルなのに。
テレビシリーズの映画化っていろいろありますが、難しいですよね。
テレビの「特番」以上のものを作れてる方が稀かも。
ま、テレビ版よりもお金かけられるでしょうから
そういう意味ではゲスト出演とか規模の大きさとか見所もあると思いますが。


by rei (2008-11-09 01:01) 

　dukeさん　nice!ありがとうございます。

　そうなんですよね。スカリーがモルダーを呼び戻しに行く時、最初はちょっと嫌がるんだけど、あっさり引き受けるし、スカリーが難病の子供の主治医をやってるのに、捜査も引き受けるし？　
　それぞれが何か絡み合ってるようんであまり関係ないんですよ。なんかちょっとお話が拡散してる気がするんですよね。

　モルダーもスカリーもまだまだかっこいいんで、もうちょっと活躍を見たい気もするんですけどね～。書き忘れたけど、スキナー副長官（でしたっけ？　はげ頭のえらい人）も出てきますよ。
by しまうま (2008-11-09 01:19) 

　reiさん

　おっと～ぉ！　レス中で一部ネタバレしてます～。

　シリーズ、最後まで見てないんですよ。シーズン3か4くらいで飽きちゃったかな。前の映画版は見ましたよ。でっかい円盤が南極かどっかから飛んでいくやつ…。台詞の中で、モルダーが子供がどうとかいうくだりがありましたけど、TV版で父親になってるのかな？　？？

　モルダーとスカリー、Xファイルを足がかりにして、映画でも一気にブレイクするかと思ったけど、ちょっと伸び悩みましたよね。ジリアン･アンダーソンが出てる映画で、シャロン･ストーンが出てた『マイ・フレンド・メモリー』ってのは見ました。結構いい役だったかな。この映画でもまだまだきれいですよね。

　映画の世界でもディズニーとかこっそり「反共」のメッセージが入ってたりするようなこと雑誌で読んだ気がしますね。そんなこと関係なく、見てて楽しければそれでいいんですけどね。
by しまうま (2008-11-09 01:33) 

　reiさん　続き

　あっ、そうか。コメント欄開くと、どのみちネタバレの部分が出ちゃうんですね。
by しまうま (2008-11-09 01:36) 

＞モルダーとスカリー、Xファイルを足がかりにして、
映画でも一気にブレイクするかと思ったけど、ちょっと伸び悩みましたよね。

ほんとですよね。
実際アメリカって日本と違って
「テレビの俳優」「映画の俳優」ってわかれてて
やはり映画の方が格が上らしいですが・・・。
テレビ→映画で大成功したのはやはりジョージ・クルーニー。
女優ならヒラリー・スワンクでしょうね〜。
私、「ビバヒル」結構最初の頃に観ていたので
彼女がアカデミー賞とった時にびっくりしましたもん。

ジリアン・アンダーソンって
かなり素行が評判悪かったんですよね・・・。
でも、Xファイル後に出演した映画も
大ヒットはしてないかもしれないけど
いいのに出てる気がします。
「マイ・フレンド・メモリー」は残念ながら観ていないんですが
「マイ・ハート、マイ・ラブ」っていう映画
これもあまり有名ではないですが佳作です。
あと「ラストキング・オブ・スコットランド」にも出てましたね。
やはり結構いい役で、きれいでしたよ。
by rei (2008-11-09 01:47) 

　reiさん

　へぇ～っ、ヒラリー・スワンクってテレビ出身だったんですか。知らなかった…。私の好きな『ザ･ホワイトハウス』ってテレビ番組の有名な賞をたくさん取ってるみたいですが、出てる俳優さん、映画ではチラッと出てくる脇役級が多いし。そういえば、『アリー･マイ･ラブ』のキャリスタ・フロックハートもそうだった。テレビから映画への壁って高いんですね。

　『ラストキング･オブ･スコットランド』は映画館で見ましたね。おっ、スカリーだ、って思ったんで覚えてます。
by しまうま (2008-11-09 12:02) 

こんばんわ!
映画のネタばれですが
全部つながってますよ。
ネタばれしていいですか?(まずかったら削除してください)
私が映画を見て、見たままを書くので違ってるかもしれません。

神父の見ていたビジョンは、
モルダーの理論によると何かつながりがある人がいないと見れないので
誰とつながっているのかを探ってました。
結果
臓器密売の犯人(最後まで生き残った人)の奥さん(と言っても男)
私が奥さんと思ったのは、男同士が結婚しても
ご主人と奥さんみたいにどっちかが女っぽくてどっちかが男っぽいと思ったからです。
臓器密売の人が奥さんでもどっちでもいいです。
その肺がんだった妻あるいは夫を助けるために
臓器密売をしつつ、体を与え続け延命してました。
しかし、その妻(あるいは夫)は過去に神父に性的虐待を受けていて
そのつながりで、その妻(あるいは夫)の目から見えるものが
神父にビジョンとして見せていました。
だから、雪の中車に座っても「何も見えない」と言ってます。
神父の見たビジョンは、あのハゲの男(臓器密売男の妻あるいは夫)
が見たものしか見えません。

スカリーがクリスチャンという少年にこだわっていたのは
モルダーも言ってたけど、産んで手放すことになった息子のことが
関係してると思いました。(推測)
幹細胞移植しか、手段がなくそのデータ収集中に
わざわざ、あそこでコピー機のエラー
そこから、スカリーも信じようという気になるんですが
スカリーは、すっごくキリスト教信者なので
神が絡むと、動揺がすごい。

神父が死んだという話のシーンでも
くどいようにモルダーが説明してます。
スカリーが、あの首に（妻あるいは夫の）血液の供給を止めたとき
神父が死んだ。
証明できる！と力むモルダー。

ファンにとっては、これぞＸファイル
しかも、希望通りの二人の関係。(ハート)
しまうまさんの言うように
スペシャルでテレビでも全然良いです。
見れれば(笑)

映画を見て思ったのは

スカリーがカトリック信者だということとか
サマンサのこと。
スカリーはもちろん
モルダーもアブタクトされたこと
スキナーとの信頼関係

テレビシリーズを見てないとわかりにくいと思いました。
特にスカリーが、妊娠しない体なのに
妊娠して無事に生まれた子を
どんな思いで手放したかという辛さを知らないと
ラストの抱擁シーンの重みなど伝わらないと思いました。

もう一回見たいです。(笑)



by コッスン (2008-11-22 00:11) 

　コッスンさん　nice!ありがとうございます。

　シリーズの大ファンでいらっしゃるんですね。「いまひとつ」なんて書いちゃってすみません。
　確かにコッスンさんの解説を読むと、全体の流れがよく分かります。私はシリーズは確かシーズン4か5ぐらいで見なくなってしまっていたかもしれません。
　特にシーズン1の一話完結型というか、超常現象とか超能力犯罪者にモルダーとスカリーが挑むスタイルは好きだったんですけど、巨大な陰謀が背景に描かれ出してからは、ストーリーを追うのにちょっと疲れてしまって。

　スキナーが出てきた時は私もちょっとニヤっとしましたよ。彼はいつも苦しいところで2人を助けるのですよね。ラストはコッスンさんの高い評価を見ると、まさしく、長年のファンのために作られたシーンなんだと分かりました。

　あと何年かしてから、結婚（？）して田舎で静かに暮らしてる2人がひょんなことから事件に巻き込まれて、元FBI捜査官として事件の解決を助けちゃう、なんて番外編、できませんかね。
by しまうま (2008-11-22 12:26) 

こんばんは!いえいえ。
いまひとつでも評価は千差万別だからいいんじゃないですか?

書き忘れましたが
神父のビジョンは、あの奥さんの見てるものだから
あの奥さんが目から血を流したとき
神父も流しただけですよ。
同様に、スカリーが訪ねたとき発作を起こしたのも
あの奥さんがやばかったからですよ。
私は、わかりやすいと思ったけど
しまうまさんと同じように、わからないという人も多いかもね。
でも、男の人を奥さんと書くのも微妙です。(笑)
シーズン１は、スカリーがモルダーの監視役で
タイプライターでいつも報告してましたね。
シーズン２でジリアンが妊娠して彼女が出産してる間を
誘拐ということで出演なしにしたあたりから
変わってきましたね。

シーズン6.くらいでモルダーがでなくなったけど
最終回くらいで出ましたよ。確か・・・

私は、スカリーの出産のときのバスのエピソードが忘れられません。
とにかく、ファン向けの作品だから
興業成績は良くないでしょうねーー

by コッスン (2008-11-23 00:58) 

　コッスンさん

　引き続き、解説ありがとうございます。なるほど～。そういう意味だったのか～という感じです。
　私は神父の霊視（？）能力の真偽が事件とつながってるのかな？　と思っていたので、モルダーが何かのトリックを見抜くのかと思っていて、そっちに気をとられていました。

　テレビシリーズでは、もううろ覚えですが、子供が何かにとり憑かれたようにテレビを見て文字だか記号だかを描き始めて、俯瞰すると大きな肖像画だったやつとか、自分の親しい人を守ろうとして幽霊が助けるやつ、小さな街で集団的な精神異常が起きて、実はそれは軍の実験だった…みたいなやつ？　など、いくつか記憶に残ってます。
　何本か、見終わって背筋がぞぞ～っとした回がありましたね。なるべく後で夜中にトイレに行かないで済むように準備して、布団にくるまって週末の夜に見てました…。ええ歳したおっさんなんですが…。『シックス･センス』見た時は夜中のトイレがかなり厳しかったので…。
by しまうま (2008-11-23 01:48) 

たまたまサンクスで１０００円ビデオが出ていたので買って観たあといろいろ調べたらここにたどり着いたので書き込みました。

以下に書かせていただく文は関西のラジオ番組等で映画紹介をやっていたパーソナリティの平野秀朗さんが公開当時にこの映画に対し言っていたことなのですが、

～Ｘファイルとは長年にわたって科学では解明できない超常現象・謎を追い続けたシリーズだった、そしてそれらを経てたどりついた一つの答として、現代のこの世界で人間にとって一番わからない「謎」とは、他人の「気持ちや思考」であるということを製作者は伝えたかったのではないか～

この評価を聞き、改めてこの映画を観ると同姓の恋人を救うために他人には理解できないような猟奇的な手段を選んだ犯人だけではなく、犯罪に手を染めた上でなお神に仕えたいと言っている神父や、少年が入院する病院での両親や病院のお偉いさんの心情、彼らに反対してまで治療を行いたいスカリーの気持ちも、ある視点からみれば理解できても、異なる視点からみると理解し納得することはできないんだ、というメッセージがよく表されているように感じました。
by NO NAME (2010-10-17 00:46) 

　NO NAMEさん

　こんにちは～。
　な～るほど…。どんな猟奇的犯罪だって、結局それを起こすのは人の心の闇みたいな部分ですものね。
　モルダーとスカリーが最終的に結ばれた？　ことで彼ら２人の間では一応の解決をみた…ってことなんでしょうか。

　前のレスでも書いたけど、２人が結婚して夫婦になっていて、ひょんなことからまた事件に巻き込まれて活躍する、って続編ができたら、きっと見に行くだろうな。
by しまうま (2010-10-17 13:06)