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『ワールド・オブ・ライズ』 [映画]

 *映画の内容に触れてますので、未見の方は注意して下さい。

 スパイアクションものということで、週刊誌の映画評もそんなに悪くなかったので期待作でしたが…。リドリー・スコットってソマリア人がショッカーの戦闘員並みにバラバラ殺される場面を延々とやる『ブラックホーク・ダウン』の監督さんでしたね。

 お話は…。アメリカやヨーロッパで連続爆破テロを起こしたイスラム原理主義のテロリスト集団のリーダーを追いかけるCIAのエージェント、レオナルド・ディカプリオが自分は危険に身をさらさずに無茶苦茶な指令を出す上司ラッセル・クロウとヨルダンの諜報機関との駆け引きの中で翻弄されながら、イラン人の美人看護師と恋に落ちたりしつつ、テロ集団を追い詰める…てな感じです。

 劇中、ディカプリオは上司のラッセル・クロウと対立して情報提供者をかくまおうとしたり、仲間を助けようとしたりと、それなりに良い奴なんですけど、テロ集団のリーダーをおびき出すため、トルコの軍事施設を使って偽装の爆破テロ事件を起こし、背後に大金が動いているとの偽情報を流して、無実の一般人を新興テロリスト集団のリーダーに仕立て上げるという無茶苦茶な作戦を考案する。
 その偽装テロに本物の死体を使ったり、架空の銀行の建物を発注したり大掛かりな仕掛けの割には餌に使った人物はあっさり本物のテロ集団に殺されるしで、ずさんで非人道的な作戦なのに、失敗してもディカプリオはけろっとしてます。劇中では善玉のはずなんですけど、「お前のせいで何人死んでるんだよ」って突っ込むところです。
 その割には病院で知り合った美人のイラン人看護師(本物のイランの有名女優さんなんだそうです)をナンパしたり、その彼女がさらわれると今度は自分と人質交換を申し出たりと、何だかCIAの凄腕スパイの割に行動が緩くていい加減な感じがします。

 ラッセル・クロウが演じるCIAの上司は協力者が殺されても全然情けをかけない非情で嫌な奴だし、善玉役のはずのディカプリオが冷静に考えると実は同じくらい非情だし(無実の人を巻き込んで死に追いやる)、映画はアメリカやその利益を代弁するCIAの傲慢さを描いているように見えます。でも、最後まで見てると、劇中の悪玉のテロ集団のリーダーは実は金のために動いてるただの極悪人なので、結局、「アラブのテロリストは悪い奴なんだな。多少ひどいことをやってもアメリカがやっつけなきゃ駄目なんだな」ということが言いたいのかなという気がしてきます。

 戦争や民族紛争のむなしさを描いているようでいて、外国でアメリカ兵がソマリア人をひたすら殺しまくっている状況を描いてる『ブラックホーク・ダウン』と何だか似てるんですよね。
 ディカプリオがテロ集団に捕まって拷問される場面はメチャメチャ痛そうなので、そういうのに弱い人は要注意です。ヨルダンの情報機関の幹部役の人がアンディ・ガルシアを若くしたような感じで、劇中でも凄腕だしかなり格好良かったです(すごく非情で怖いけど)。

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コメント 2

@

リドリー・スコットは、戦争や民族紛争のむなしさを描くのと同時に、たくさんの死が産み出されている現実を描く監督です。ブラックホーク・ダウンやワールド・オブ・ライズを曲解して無理矢理悪い解釈しようとする態度は、一種差別的というか、あなたの変な政治的思想を露呈してるようにも思えますが。リドリー・スコットの「1492コロンブス」や「キングダム・オブ・ヘブン」は見ましたか??
死が産み出される現実を描写してこそ、戦争や民族紛争の空しさも出るものです。死の無い戦争や民族紛争がありますか?
by @ (2009-05-06 08:13) 

しまうま

 @さん こんにちは。初めまして。

 好きな監督さんのこと、悪く書いてしまいましたかね。気分を悪くされたならすみません。@さんが上げた2作品はどちらも見ていません。
 ただ、「ブラックホーク・ダウン」は戦争や民族紛争の悲惨な現状を描いているというより、「民族紛争に介入したアメリカ兵の悲惨な状況を描いている」という風に見えたんですよね。ちょこっとだけ子供が殺されたことに抗議する老人の描写が入りますけど、何だか後味が悪かったのを覚えてます。

 民族紛争というと「ホテル・ルワンダ」、戦争映画のエグイのだと「炎628」とかが印象に残ってます。どちらも被害に遭った当事者の視点に立ってる映画だからです。
 レビューしたこの作品も、テロリストを批判しているようで、無実の一般人をおとりに使ってあっさり死なせるなど、アメリカの介入で被害をこうむってる側の人たちの視点がないような気がしたので、何だか似てるなあ、と感じたのです。

 リドリー・スコットはもちろん優れた監督さんだと思うし、「ブレード・ランナー」も「グラディエーター」も見ましたし、凄く良かったですよ。監督作じゃないけど、「イン・ハー・シューズ」はかなり良かったですね。
by しまうま (2009-05-06 16:01) 

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