もう一人の達人Lynch(AUTOGRAPH)。 [音楽]
とか書きつつ、実は80年代のLAメタルって全然詳しくなくて、私はバンドの名前は知らなかったんだけど、「タッピングの名手」Steve Lynchが在籍したことで知られる「AUTOGRAPH」というバンドがありました。「知ってるよ!」という人も多いはず。リンチというと、圧倒的にGeoge Lynchの方が有名ですが、こっちのリンチもメチャ巧いですよ。歌もののアルバムはほとんど買わなかったんだけど、名手スティーヴ・リンチのテクを聴いてみたくて買ったのがこれ。今でもアマゾンで買えるみたいです。
SIGN IN PLEASE 『AUTOGRAPH』(1984年作)
いきなりバリバリのメジャーレーベルからデビュー。当時はメタルが売れる、って分かってたから、いいバンドはどんどんメジャーレーベルがチャンスを与えていたんですね。このバンド、LAメタル界ではかなり人気あったみたいで、Youtubeに動画が結構アップされてます。リンチさんはタッピングの教則ビデオも出してるみたいで、その動画も結構ありました。
80年代のLAメタルのPV見てると、メンバーがメイクしてるバンドばっかりだし、金髪のお姉さんが大勢意味もなく出てくるのとか、不景気だの戦争だのの暗い影は微塵も感じないノー天気な映像で、海のこっち側の私たちよっか、当のアメリカの人たちの方がこの時代のメタルを懐かしく思ってるかもしれません。
バンドの曲は典型的なLAメタルで、シンプルなリフに明るいちょっとポップなメロディ。そこにリンチさんの結構複雑なタッピングが入ったソロが炸裂します。動画見てると、両手タッピングも得意みたいで、右手は指2本ではじいてて、流麗で速いです。フルピッキングの部分はちょっとモタっとするところあるし、タッピング以外の技はそんなに得意でもないみたいですけど、巧いです。
曲がちょっとポップな分、ソロがやや短いんだけど、ちょっと浮いちゃうくらいフラッシーでかっこいいです。もっとハードな音でギターが目立つバンドでやれればいいんだろうけど、この時代にはこの音が合ってたんですかね。テクもセンスもありそうな人だけにちょっと残念。もっと歴史に名前を残したギタリストになっていたかもしれません。
リンチさんご本人のオフィシャルウェブ見ると、映画音楽もいくつか手掛けたみたいで、ミュージシャンとしては成功した人に入るのかなあ。GITにも在籍し、あの六弦女王Jennifer Battenの同窓生だと書いてあります。最近になってソロ活動を再開したみたいで、ソロアルバムをウェブで販売していたので、注文してみました。着いたらまたレビュー書いてみます。
朝から変拍子。(Keith Emerson BAND) [音楽]
ホンマでした…。(ワンセグの画面から)しかも、一緒にバンドやってるいまやキースの右腕と言っていい凄腕ギタリスト、Marc Bonillaまで連れてます(これは演奏終わってからのインタビューですね)。
こんな時間じゃ70年代にプログレ聴いてたバリバリのファンは見られないよ~。
紹介の後、いきなり演奏。有名曲のメドレーみたいなのから始まって、ニューアルバムの曲もかな? もちろん変拍子バリバリ。朝っぱらから変拍子のプログレっす。「とくダネ!」って最近、J-POPの懐メロみたいなのをよく朝からやってますが、いきなりキース・エマーソンとは! おそるべしフジ。
サウスポーの実力派ギタリスト、マーク・ボニーラ。90年代のハイテクギタリストブームの時、インストのソロアルバムを出してます(確か2枚)。キースはちょっと指使いが怪しかったですけど、マークは結構きっちり弾いてました。
小倉さん、曲の後のインタビューで興奮しまくり。プログレも好きなんですね。最後の方でちょこっとだけマークの名前も紹介しましたけど、「インストルメンタルのソロアルバムも出してる凄腕ギタリストで、最近はボーカルでキースのバンドに貢献しているマーク・ボニーラさんでした」くらいは言ってあげてほしかった。まあ、メインはキースだからしゃあないですが。
来日してるんですね~。大阪でもコンサートやるのかな…。ちょっと見たいな…。
めっちゃ格好いいが…。『Keith Emerson BAND』 [音楽]
『Keith Emerson BAND featuring Marc Bonilla』
私はELPはそんなに知らないんですが(何枚かの有名アルバムは聴いたことあります)、マーク・ボニーラの名前につられて買ってみました。まぁ〜マーク・ボニーラの動画って見たことないしなぁ、程度のことです。付録のライブDVD(場所はハンガリー)に好きな曲『悪の教典#9第1印象パート2』が入ってるので、そっちから聴いたら、びっくり。ボーカルのマークの声がまんまグレッグ・レイクでした。めっちゃ巧いコピーバンド聴いてるみたい。
ひえ〜っと驚き、CDへ移行。新曲もやっぱ似てる! ELPの大ファンなら違うと気付くかもしれませんけど、私が知らずに聴いたら初期の頃のELPの未発表音源だと言われても信じるかも。ドラムのグレッグ・ビソネットがメチャ巧いのは前提として、ちょっとタメの効いた後ろノリのドラムなんで、リズムがなんかちょっと違う、という感じはします。
で、何度か聴いて思ったんですけど、メッチャ格好いいんですが、まんまELPみたいなんですよ。それも70年代の彼らが全盛期だった頃の雰囲気。ライブDVDでも、キースさんは配線とかいっぱいくっついた、もろアナクロなデカイ機材(モーグ?)を使ってて、もろ70年代風。
聴いてると、格好いいし、巧いし、キース・エマーソンって衰えないなぁと思う半面、なんか昔のELPを好きな人のために、限りなくELPっぽい音を出すバンドをELPのメンバー自身がやってるような寂しさも少し感じた。ELPやプログレを好きな人にはどうなんだろう。前に買った、ジミー・ペイジがブラック・クロウズと一緒にZEPのカバーやったライブ盤みたいな感じか?(このライブ盤、ハイテク化したZEPみたいで私には格好良かったです)
個人的には、このアルバムを本来買うべき人には無関心かもしれませんが、テクニシャンのマーク・ボニーラのギターがあんまり目立っていない(まあキースさんのバンドだからしょうがないけど)のが残念。こんなに歌が上手い(しかもグレッグ・レイクに声そっくり)のは知らなかったが…。キースさんはマークを連れて来日するそうです。ちょっと見たい気もする…。
北京五輪の閉会式にジミー・ペイジが。 [音楽]
オリンピック、終わりました。昔はオリンピック、そんなに見てなかったんですが、年齢とともに涙腺がゆるくなるのか、今回は結構感動する場面がたくさんありました。ソフトボール、競泳、レスリング、陸上…。野球とかシンクロとかちょっと残念だった競技も。
そうか~今日は閉会式か…と思いながら、行きつけの喫茶店で新聞読んでたら…。なにげに番組欄に「ジミー・ペイジ登場」の文字が。ええ~~っ! オリンピックの閉会式にあのLed ZeppelinのJimmy Pageが? 現役時にはさんざんツアーで悪さをしたらしいし、どう考えてもスポーツとは無縁そうな不健康な音楽をやってた彼らのリーダー格のあのギタリストが? スポーツマンの祭典のフィナーレに? ホントなのか? と日曜の定番の映画館通いをパスしてテレビの前で待ってました。
いろんな出し物が続き、さすが中国! という大掛かりなパフォーマンスがこれでもか、とばかり続きます(しかし、開会式とか閉会式でやってた宙吊りの演技、練習で大怪我した人とかいなかったんだろうか…)。次回2012年の開催地、ロンドンへ五輪旗が引き継がれると、画面がパッと切り替わります。
(ワンセグ画面から)
いきなり、ポップなCG。さすがThe Beatlesを生んだ国。いかにも「国家的事業」という重厚で華やかな人海戦術の演技から一気にスッと雰囲気が軽くなります。
(ロンドン五輪のロゴだとか。何だかメタル系のバンドのロゴみたいですね。なんかちょっとZEPのフォーシンボルズ、入ってないか?)
(北京からロンドンへ乗り継がれるバス…。)
バスの屋根がスス~~っと開き、そこに舞台が。なんと。そこには!
(出ました! 御大。元祖3大ギタリスト)
(おい! 瞳! って…朝の連ドラの西田敏行が出番を間違って出てきたんじゃないですよ…って似てるの白髪とちょんまげだけか…)
曲は…会場の音響が悪くてよく聴こえないが、『胸いっぱいの愛を』でした。NHKのアナウンサー、ちょっと興奮。きっと高校生の頃、コピーしたんだね。ジミー派はレスポール買いましたよね。私もコピーしました。ハイ。この時間帯、おっさんの視聴者占有率、異常に高いとみた。
(まさか…ソロも弾くのか。まあ、『ハートブレーカー』とか『アキレス最後の戦い』じゃないから大丈夫だろう…)
おおっ! なんかそれなりに指が動いてる。まさか中国の得意の◯◯じゃあ…。いや、実は特殊メイクで変装した別の巧い人が弾いてるのでは…。いやいや、そんなことはありまへん。ハードロックを発明したと言ってもいいジミー御大のありがたいフレーズを中国13億人の人民はどう聴いたでしょうか。
(そしてもうひとりのロンドンの使者はサッカーのベッカム選手)
イギリスはサッカーとロックの国なんだよ、ってとこでしょうか。歴史も伝統もある国ですが、サッカーとロックでオリンピックの閉会式に臨むなんてかっこいいじゃないですか。ロンドン開催時はベッカム選手は現役じゃないかもしれないし、ジミーは68歳になってるから、ギター弾けるかな…。できたら弾いてほしいですね。
やがて聖火は消えて、花火がどど~~んと上がり、今度は中国のバンドの歌やら踊りやらがあって、閉会式は終わり。オリンピックの前にも最中にも、世界のいろんなところで民族紛争やらほとんど戦争に近い出来事やらいろいろありましたけど、試合そのものは平穏に終わって何よりでした。今回はちょっと危なかったけど、もうちょっと、ほんの少しでオリンピックは台無しになってしまっていたかもしれない。今の世界は平和とは言い難い状況ですが、オリンピックが開催できる程度には安定した状況にあることを感謝しなければいけないのかもしれません。
Tamasのライブ。『Live in Budapest』 [音楽]
(1998年作 邦盤でAVALONから出てました)
ライナーノーツによると、90年代半ばの彼の腕が認められた頃はタマスさんもアメリカでプレイしたり、Tony MaCalpineのヨーロッパツアーの前座をやったりしたそう。カバーもやってるし、やっぱりトニーのプレイスタイルが好きなんですね。メロのいい曲を書くところは確かに似てる気がします。
前も書いてますけど、タマスさんのプレイはテクニックももちろんあるんだけど、タメ気味の運指で聴かせる美しいメロディが持ち味。ロックっぽい歌モノの曲は、今聴くとリフがちょい懐かしいLAメタル風ですが、それなりにかっこいいです。歌モノでもタマスさんの持ち味が出るバラード曲はかなり良いです(今でもヒットしそう)。
インスト曲は前に紹介した1st(?)の『GUITARMANIA』の「Final Frontier」(トニー風のきれいな曲)のほか、トニーのカバーの「Ice Princess」(ほぼ完コピ)、優しげな美しいメロディの「Memory's Avenue」。この曲は曲の題名が聴いてるとそのまま浮かんできますよ。初期のアルバムに入ってるネオクラ風の速い曲もあって、タマスさんのテクニックも十分に楽しめます。
タマスさんも2008年の現在では、かつての速弾きギタリストブームの中で光を放った幾人かの一人なのかもしれませんが、やはり、そのメロディが聴く人の耳に強く残るんでしょうね。まだまだ活躍してほしいプレーヤーです。
やっぱり凄腕らしい。Larry Mitchell [音楽]
前に書いたLarry Mitchellですが、2ndアルバムと思われる作品が出てきました(例によってCDの山の中からですが…)。ご本人はバリバリ活動中のようで、これ書くのにオフィシャルウェブをちょっと見てみたら、Ibanezの創業100年記念のライブでつい最近来日してて、Steve Vai、Paul Gilbert、Andy Timmons、Marty Friedmanと共演してますね(ウェブの中に写真あり)。
そんな凄いライブあったんだ…。CD出したら…マニアさんたちが必ず買うと思うんですが…(すんごく売れるとか大ヒットはしないかもしれないが…)。で、まあ言い換えると、それくらいの凄腕メンバーの中で演奏しても違和感のない馬鹿テクさんということですね。
『Mind・Body・Soul』 Larry Mitchell (1994年作)
前の記事読み返してたら、「アコギがメインに出た2nd」とか書いてますが…アコギメインは3枚目だったかも…。これは前作の延長線上で、ちょっとブルースっぽい雰囲気を交えながら、スッと力を抜いた柔らかいフレーズのソロが流麗に決まる癒し系のなかなかなアルバムでした。前作よりかなり完成度高し。地味なジャケットだけど、かっこいい曲あるし、ギターめっちゃ巧いですよ。
ジャケットの写真見ると、スローなもろブルース系の重たいプレイを連想するかもしれません。だけど、中身はもろハイテクなGインストアルバムで、ヘヴィなリフにうねるような速いソロの乗っかるロックっぽいかっこいい曲や、ちょいハネ気味のリズムに乗っけたフュージョン風の軽やかな曲もあったり、前作より曲のバリエーションがぐんと増えた感じ。書いてることが同じで芸がないですけど、ちょっとEric Johnsonっぽいんですよね。クリーントーンのバッキングで分かりやすいきれいなメロディを聴かせる曲があったり、EJの影響を感じます。
ちょっとタッピングっぽく聴こえるフラッシーな部分(前に書いた謎のLinking system奏法かもしれませんが)もあって、やっぱジャズ・フュージョン系でもブルース系でもない「ハイテクさん」らしい「基本は弾きまくり」のプレイスタイルなんですが、トリッキーな技はあまり使わず、メロディを聴かせるので、そこも正統派っぽくって良い感じです。
Shawn Laneの音源。(Michael Shrieve) [音楽]
Michael Shrieve 『Two Doors』(1995年作)
何で2枚のドアかというと、M1からM8がショーンとヨナス、M9からM19はBill FrisellってギタリストとWayne Horvitzってオルガンとのコンビネーションで、2つの違った世界をつくっているからなんだと思います。ビルさんもウェインさんもそれぞれジャズ界では結構有名なプレーヤーのようです。曲はスローなやつは環境音楽っぽかったり、ELP風だったり、カントリーっぽかったりといろいろ。
ドラマーのソロらしく、音は前に出てきているし、ドラムソロみたいな曲もあるにはありますが、普通にギターアルバムとして楽しめます。肝心のショーンのプレイはどっちかというとジャムセッション風(推測ですがたぶん一発録り)で、『POWERS OF TEN』みたいな練り込まれた曲はないですが、M1の「STELLAR RAYS」って曲は緊張感のある複雑なリフが駆け回るかっこいい曲。
ショーンにしてはソロのスピードは全体にちょい抑えめだけど、疾走感のある曲はかっこいいし、セッション風だけど、ソロはやっぱり結構唄っていて、エルボーグさんのブリブリ鳴りっぱなしのベースのマッチがいいです。退屈な曲はないとは言いませんが、ショーン・レインの音源のひとつとして楽しめます。
EJのボーカルを堪能。『Souvenir』 [音楽]
EVHさんのとこで凄腕と取り上げられていた「John5」のソロをタワレコで一気に4枚発見してしまい、その場でまとめ買いしてしまったのにまだ聴けてないんですが、取り上げようと思ってたアルバムもジャケットをスキャンしたまんまで、パソコンに結構たまってる今日この頃でございます。…音楽関係の記事って気分に余裕のある時しか書けない…。
というわけで、アマゾンで買えたEric Johnsonの「Souvenir」です。オフィシャルサイトで通販しかやっていないと聞いたんですが、たまたまなのか買えました。聴いて思ったのは、EJってきっと歌うのも大好きなんだなぁってこと。
Eric Johnson 「Souvenir」(2002年作)
EJを好きな人はたぶん過半数、いやもっと高い比率で、彼のギターが好きなはず。誰にも真似できない独特の透明感のあるトーン、美しいメロディ、繊細で時にはダイナミックなフレージング…。EJはアルバムの中でインストとボーカルとおおむね半々ぐらいに収録してることがほとんどで、もちろん、ボーカル曲もいいんだけど、どうしてもインストをメインに聴いてしまいます。
このアルバムはEJの過去のかなり古いものを含めたデモ音源やら試作品を集めたものなんだそうです。それでも通しで聴いて、流れるように曲がつながっているので、有名プレーヤーがたまに出す過去のデモ音源をバラバラにつないだような作品とは完成度が全然違います。これでも正式にリリースしないところがさすがEJというか。
で、気持ち、ほんの気持ち程度ですが、ボーカルがメインのアルバムのような気がします。インストもあるにはありますが、エレクトリック1本でちょっとジャズっぽい弾き語り風プレイだったりと、EJのいつものような超絶プレイを聴きたい人にはちょい物足りないかもしれません。でも、ボーカル曲がまたシブくていいんですね。
ジャケットの写真はウミガメですけど、アコギ1本で弾き語りで聴かせたり、癒し系の音が多くて、まさにそんなイメージのアルバムです。M3でBEATLESの『Paperback Writer』をカバー。EJのボーカル曲カバーって珍しいですが、軽快なリズムに乗っけてギターもよく唄ってる。
アルバムとは直接関係ないんですが、アマゾンから届いた時についてたCDの帯が何故か漢字。
帯をアップにすると…。
漢字の雰囲気から想像するに「20世紀で最も影響力のあるギタリストで、G3のメンバーで…云々」とかそんなことが書いてあるんでしょうか。このアルバムを売ってる会社は台北にあるようです。どういう権利関係なのか分かりませんが、台湾ではCD屋で買えるんでしょうね。この帯の上に「VIRTUOSO 74」って書いてあるからシリーズものなんだろうか。ほかはどんなの出してるのか興味ありますね。恐るべし、台湾。これから凄腕のギタリストがぞくぞく出てくるかもしれませんね。
「超絶」。(Guthrie Govan) [音楽]
さ~て。ひょんなことから始めたこのマニアックなブログも音楽関係の記事がついに100本になりました。最初の記事がこの世界に私を引き込んだSteve Vaiの名作『Passion and Warfare』。この作品はたぶん100年後でもギターインストの名作として残っているはずです(人類が滅亡していなくて、エレクトリックギターの音楽をまだ楽しんでいると仮定すれば)。
では記念すべき100本目の記事は誰にすべきか。これはやっぱり、インストばっかり聴きまくっていた私が久々にぶっ飛んだプレーヤーにすべきですね。完成度とかテクの凄さという点ではKiko Loureiroもガスリーとほぼタメを張る線だと思います。しかし、ガスリーはそれまで全然名前知らなかっただけに、やっぱ聴いたらびっくりした。前に書いた『GUITAR ON THE EDGE』に曲を提供していたから、ぽっと出の新人じゃなくて、キャリアはそれなりに長い人のはずです。何でこんな人が今まで埋もれていたんだろう…すごく不思議。
『EROTIC CAKES』 Guthrie Govan (2006年作)
この作品、まず、凄まじいテクがあるのに、曲もかっこいい。それに、ただ弾きまくってるだけじゃないですね。既にYoutubeなどで動画がたくさん出回っていて、それ見ると、たぶん楽器やらない人でもギターという楽器を弾く上で使えるあらゆるテクニックはほぼ最高レベルで持っていることが分かるはずです。レガート、スウィープ、フルピッキングの超高速フレーズ、タッピング、いろんなハイテク技が流れるように炸裂しまくり。動画見てると、実にかる~~く、フレットをなでるように弾いてるのにまたびっくり。
一体、どんだけ練習したらこんな風に弾けるんだろう。あのGreg Howeがガスリーのテクにたまげたそうですから(じゃあ一体私ら凡人はどうやって驚けばいいのかな?)。曲も全体を通しで聴くと変拍子でかっこいい曲が目立つからなのか、ややプログレ風味が強いかな? という気はしますけど、泣きのギターもあるし、ジャズっぽい雰囲気を交えたり、聴きやすい良曲ばかり。「捨て曲」みたいなのがほとんどないです。作曲力もあると思います。リズム隊も巧い。BがSeth Govan(兄弟? めちゃ巧い)、DrがPete Riley。
M4『NER NER』でソロにRichie Kotzenがゲスト参加。彼の得意なドッ速いレガート+タッピングの技でガスリーのソロに対抗してます。あと、どうやらプロダクションのみのようですが、この人もハイテクなプレーヤーJan Cyrkaも参加。
ガスリーはギタークリニックで「誰それ風のプレイ」という演奏を模範演技でやるほどなので(Youtubeに多数動画あり)、曲によってはスティーヴ・ヴァイ風(M6が何となくそんな感じ)とか、「あっ、◯◯風だ」つうのが時折、耳の奥の音楽脳を少し撫でるのですが、あくまで隠し味的にガスリーのプレイの中に溶け込んでいて、再びガスリーのでかい手が超高速でフレットの上を駆け回ると、すぐに違ったイメージへ聴き手を連れて行くのですね。
あえて欠点? を上げると、「巧すぎてかえって個性が分からなくなってる」(?)ような気がするところかな。誰にも似ていないようで、いろんな人の巧いところをみんな備えているので、かえって誰にでも似ているように聴こえる? いや…違うか。う~~ん…。とにかく、Gインストとしては、高い完成度があり、かっこいい曲が多いです。ジャズ・フュージョン好きな人でも、メタルやプログレが好きな人でも、十分楽しめるんじゃないかと思います。
スタジオミュージシャンのフュージョン2題 [音楽]
前に書いたマイケル・J・フォックスのギターの先生、Paul Hansonのアルバムを出していたドイツのMGI Records。そこのレーベルから出ていたアルバムで、輸入盤屋を歩き回っていて偶然見つけたフュージョン系プレイヤーのアルバム2枚も紹介しておきます。まず1枚目の人ですが、名前はジェイミー・グレイサーと読むのかな?
Jamie Glaser 『THE DREAM』 (1989年作?)
印象はまったくクセのない都会系フュージョン。流れるようなフレーズになかなかに歌うギターで、ラリー・カールトンとかリー・リトナーを好きな人なら当たりって感じかな。かなり速く弾くところでも安定していて、かなり巧いです。ちょっとネットで調べてみましたが、アメリカのWikipediaによると、ブライアン・アダムス、ジャン・リュック・ポンティ、マンハッタン・トランスファーなど有名アーティストとの共演多数とあります。う~~む…この人も知る人ぞ知るギタリストだったんですね(今初めて知った…)。スローなバラード風ボーカル曲が2曲あって、それもなかなかお洒落な感じの曲です。さすがに売れっ子のスタジオミュージシャンだけはあります。
M4で「SUNSHINE OF YOUR LOVE」をアコギ使ってジャズっぽいアレンジで演奏していて、元はロック系の人なのかもしれません。ジャケットの中の写真はフランク・ギャンバレを思いっきりイケメンにして若くした感じで、このまんまメタル系バンドのフロントギタリストやれそうです。今の写真はおっちゃんでしたが…。1955年、ニューヨーク生まれとありますから、まだまだ現役でギター弾いてるのかな。ご本人のオフィシャルウェブ見てみましたが、このアルバム、ネットで買えるようです。
しかし…Discography見てたら…。何と、共演者の中に「IYO MATSUMOTO」って…曲は『YOU STOLE A PIECE OF MY HEART』って(松本伊代さんの歴代曲もWikで調べてみたけど、どの曲なのか分からない)…。レコード会社はビクタージャパンになってます…。う~~む…恐るべし…日本の歌謡界…。
もうひとりはジェイミーさんよりもっと頻繁に車の中でかけてたプレイヤー。Peter Wölpl…ピーター・ウルプル(?)って読むのかな。Wの次のO(オー)の上に点々が2個ついた文字です。
Peter Wölpl 『Mr.Fudge Speaks』 (制作年分からず。1990年ぐらいか)
この人、ちょっとネットでは詳しい情報出てきませんが、ジャズドラマーのBilly Cobhamのアルバムに参加してるみたいです。ジャズ・フュージョン系をよく聴く人なら知ってる名前かもしれません。
曲調は全体にちょいゆる~くてスローな感じ。う~~~ん…Robben Fordのギターのエッジをちょっと鋭くして正確かつ速くした感じ? 何曲かでかなりな速弾きもやりますけど、ロベンと同じく、何だかメロディがお腹に優しい感じで、ゆったり聴けるんです。弾きまくりの曲でタッピングっぽい音もしてますが、基本はオルタネイトのフルピッキングで流れるようにきれいなメロディを弾く人のようです。
このアルバムで気に入ってるのは、M4の『LIVING ON THE RUN』って曲。スキップを踏んでるような軽やかなリズムで、明るい感じのテーマメロディが分かりやすく、耳に残ります。中間部でぐっと雰囲気が変わって、スケールを変えたのか何なのか私の耳じゃ分かりませんが、ソロがマイナーっぽい音に切り替わり、かなり速いフレーズなのにギターがよく歌ってる。ソロが終わると、またメインのメロディに戻ってくる。分かりやすくて楽しい曲です。このアルバムからはよくこの1曲だけドライブ用MDに落としてました。
ということで、こんだけ良質なGインストのギターアルバムを出していたMGIというレーベル。ジャケットには「Western Germany」って書いてあるんです。ミュンヘンにあったらしい。
ロゴはこんなんです。今はないのかなぁ…。アメリカのSHRAPNELよりギタリストのスタイルがフュージョン寄りですが、新人発掘よりベテランのスタジオプレーヤーにもスポットを当ててる分、ある意味、良質な作品が多いような気がする。東西ドイツ統一でつぶれちゃったのかなあ…。