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トーネードvsヤコブレフ 『奇襲』 [小説・本]

 *小説の内容に触れてるので、未読の方は注意して下さい。

 この作品はどうやらシリーズものらしくて、その3作目みたいです。架空(?)のNATOのEU連合軍「ノベンバー部隊」と新生ロシア軍内の守旧派の対決…がテーマです。作者がイギリス人でイギリス空軍在籍の経験もあるためか、主役は対地攻撃型と対空戦闘型のパナビア・トーネード。対して、ロシア軍はなんと、タイフーン級改造の潜水艦空母に搭載のヤコブレフ142(実在の141の改良型)。

 トーネードとヤコブレフの対空戦闘とは…結構マニアックです。というか、空戦の場面は最後の方にちょこっとしかないんですけど。しかもトーネードめっちゃ強いし。ヤコブレフ141とは、推進用と上昇用にエンジンを2個積んでいて、垂直に離陸できるロシアの艦載型戦闘機で、同じ垂直離陸の能力を持つハリアーと違ってマッハ1.8ぐらいまで出る結構かっこいい戦闘機です。

『奇襲』ジュリアン・J・サヴァリン(二見書房)

 「化け物みたいな潜水艦なんだとさ。タイフーン級をもとにした、それよりでかいやつらしい。途方もない大きさみたいだぞ…」「だけど、この冗談にゃまだ続きがあるんだぜ。その化け物は6機-いいか、6機だぞ-のYak142を積んでるんだと。超音速で身の軽いやつだ。いい知らせじゃないか、え? 面白い一日になりそうだぜ」(p418)

 新生ロシアの軍部の没落ぶりをおもしろく思わない旧KGB幹部を含む守旧派が再び世界の混乱に乗じて連邦の復活を企てる。その武器は新開発の対ステルスレーダーと世界初の潜水艦空母。対ステルスレーダーはアフリカの某国の砂漠の地中に巧みに隠蔽していたが、米国の監視衛星のトラブルにより、偶然発見されてしまった。しかし、偵察に向かった米ステルス機はあっさり撃墜されてしまい、こうなったら超低空で侵入し、一撃必殺で対地攻撃が可能なトーネードで攻撃するしかない…てな感じで。

 対ステルスレーダーとか、魚雷より速く海中を進むタイフーン級改「カレリア」(潜水艦空母)の性能が驚異的なんですが、結構あっさりやられたりして。パイロットの色恋沙汰がいろいろあったり、守旧派に雇われた旧KGBの暗殺者との戦いとかもあって、それなりに膨らみのある話のようでいて、どうしていきなりどこの国のものか分からない対ステルスレーダーを爆撃しに行くのか、とか、どこの国か分からないヤコブレフ(まあロシア以外ありえませんが…)といきなり空中戦になってしまうのか、とかちょっと説明不足かな? という部分もあり。普通、この小説の出来事が起こったら、戦争になりますから。

 アメリカみたいに無人機だのステルス機だの巡航ミサイルだので、自分はなるべく危険を冒さずに相手を一方的にやっつけようってのは、あまり軍事サスペンス的には燃えないですよね(盛り上がらないし…)。実際には対ステルスレーダーなんてものは発明されてないので、これからもそういうやり方続けるんでしょうが…。

 この小説の中でも、地表すれすれを超低空で侵入し、対空砲とか地対空ミサイルの反撃をかいくぐってレーダー基地を爆撃するトーネードのかっこよさが存分に描かれています。イギリス軍のトーネードは湾岸戦争でもそれなりに被害を出したそうで、戦術的には低空侵入、対地攻撃というのは時代遅れなのかもしれませんが、パイロットの腕と度胸が試される闘いなんですね。


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