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激闘! シエラ級 『原潜バラクーダ奇襲』 [小説・本]

 *小説の内容に触れていますので、未読の方はご注意ください。

 え~~マニアックなのは分かってるんですけど、こっち方面もちょっと更新を…。

『原潜バラクーダ奇襲』パトリック・ロビンソン(二見文庫)

 「大統領! われわれの知る限り、北極海から太平洋を越えてアラスカを攻撃できる潜水艦は1隻しかありません。20年前に建造されたロシア製潜水艦、シエラⅠ型〈バラクーダ・タイプ945〉です」(P424)

 これは潜水艦ものを得意とする『キロ・クラス』と同じ作者の作品。簡単なあらすじは…。イラン系イギリス人の元SAS少佐がハマス掃討作戦に従軍中、誤ってアラブ人の女性と子供が射殺される現場に立ち会ってしまい、アラブの血が目覚め、故郷と軍を捨て、ハマスに身を投じる。

 元少佐はイスラエルの難攻不落の政治犯専用の監獄を攻略してアラブのテロリスト指導者を解放、さらにイスラエルの銀行を襲撃して軍資金を調達し、財政難のロシアから船体がチタニウム製の特別仕様の攻撃型原潜シエラⅠ級改「バラクーダ級」を中国とイランの手を借りて購入します。

 シエラ級にはロシアの巡航ミサイル「グラニート」が搭載されており、それでアメリカの主要石油施設、発電所などライフラインを破壊し、アメリカ経済を大混乱に陥れるんですね。イラン特殊部隊を使って海底の原油パイプラインも破壊します。こんな感じ。
 …期待したシエラ級vs米駆逐艦、とかvsロサンゼルス級原潜、とかの派手な戦闘シーンはありませんが、なかなかおもしろかったです。

 原潜の操艦にはロシアでよく訓練されたイラン海軍士官があたります。実際にはそんなに命中率が高くないだろうロシア製の巡航ミサイルは次々に原油施設をピンポイントで攻撃するし、まあ、いろいろ突っ込みどころはあるんですけど、非常に高性能な(?)シエラ級改「バラクーダ」がアメリカの対潜水艦警戒網をかいくぐってアメリカ本土攻撃を敢行するストーリーは結構わくわくします。
 しかも、主人公にあたる元SAS少佐は大量殺戮は行わず、9.11テロ事件の後に書かれたにしてはこの元SAS少佐のハマス指揮官を「いい人」に描いています。自分の命を粗末にせず、敵も無為には殺さず、石油、発電所というアメリカ経済の根幹に効果的な大打撃を与えて、最大の成果を得る。

 さらに、最後にシエラ級を「ある場所」に投棄して逃走するんですが、これもなるほどな~という感じです。作者はどうやら民主党が大嫌いで、タカ派共和党寄りの人らしく、クリントンの悪口が何度か出てくるのと、知性派のテロリストにまんまと裏をかかれるのは軍を弱体化させた民主党政権が悪いのだ、というくだりがちらちら。
 クライマックスの発電所攻撃では、ちょうどアカデミー賞の授賞式をやってるロサンゼルスの上空をグラニートが音もなく通過、華やかな式典が突然暗闇に包まれる派手な場面が添えられており、米民主党の最大のスポンサーらしいアメリカ映画界への皮肉になってるのかもしれません。
 まあ、小説に出てくるアメリカ軍上層部はかなり傲慢だし、例によって中国とアラブは悪者で、ロシアはちょっと意地悪なお仲間で…というステレオタイプなところは辟易とする部分もあります。
 
 元SAS少佐はまんまと逃げおおせますので、あとがきにもありますけど、たぶん続編が制作されるんじゃないかなあ…。
 ちなみにこの作者の最初の作品の『ニミッツ・クラス』は英海軍で操艦術を学んだアラブ系のテロリストがキロ級潜水艦で待ち伏せ攻撃を行い、アメリカ軍のニミッツ級空母を核魚雷(確か)でぶっ飛ばすという、結構痛快な(?)お話です。


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