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ロシアの優良輸出品 『キロ・クラス』 [小説・本]

 *本のあらすじに簡単ですが触れています。読もうと思っている方は以下の本文を読まない方がいいかもしれません。


パトリック・ロビンソン(角川文庫)

 この本もまず、表紙の挿絵のかっこ良さは合格でしょう~。お話は中国がロシアから購入するキロ級潜水艦をアメリカが「アジアの安全保障を不安定にする要因」だとか何とかで、特殊部隊を派遣して、引き渡し途中にこっそり爆破しちゃうという無茶苦茶な話です。ロシアも阿呆じゃないので、いろんな対抗策を弄して破壊工作を免れようとしますけど、まんまとやられちゃいます。でも、こんなことして戦争にならないのか?! 何百億円ですから。潜水艦。

 作者曰く、「巧みな操艦術で操られた場合にはその小型の潜水艦は墓場のように音を立てない」なんだそうです。う~ん…シブイやん。ちなみにこのパトリック・ロビンソンさんはどうやら潜水艦ものが得意な作家さんのようです。 
 軍事サスペンスものでもいろいろ得意分野があるようで、トム・クランシーさんみたいに書店に独立したコーナーが設けられていることが多いデイル・ブラウンさんあたりは爆撃機が主役の小説が得意です。デイル・ブラウンもそうだけど、軍人が退役してから軍事サスペンス小説を書くケースがアメリカでは多いみたいですが、ロビンソンさんはジャーナリスト出身だそうで、その描写からは相当な取材の跡がうかがえます。
 
 う~む…。しかし、実際、中国ってキロ級潜水艦、もう何隻も買っちゃってるんですけど…。キロ級とは、ロシアが誇る小型のディーゼル潜水艦。長距離を移動するには向きませんが、狭い範囲を哨戒すると高性能を発揮します。何より、小説にも取り上げられてるけど、静からしいんですよね。イランにも輸出してるようです。ロシアって武器は結構な優良輸出産業なんですね。

 潜水艦は動力源が原子力とディーゼルのタイプがありますが、ディーゼル艦の方が静かなのです。??? 普通、ディーゼルエンジンってうるさい印象がありますが、夜中にこっそり浮上してディーゼルエンジンで発電し、昼間は充電したバッテリーでモーターを回して航行するのですね。日本の自衛隊の潜水艦は全部ディーゼルです。それも、キロに負けないぐらい高性能らしいです。
 一方、原子炉は簡単に止められないし、高速で回転するタービンを減速する歯車の騒音を減らすことが難しい。中国やちょっと前のロシアの原子力潜水艦はその辺の技術が追いつかず、アメリカの原潜に比べると結構うるさいそうです。

 実際、ちょっと前にひょんなことで知り合った海自の偉いさんに「キロ級ってそんなに静かなんですか?」と、この小説を引き合いに出して聞いたことありますが、その方が現役で潜水艦に乗っていた頃は「幻の艦」だったそうです。冷戦が終わり、今はロシアもNATOと仲良くなっちゃって、キロもたまに日本にやって来たりします。最近見たロシア映画の『72M(72メートル)』という映画にもキロが「出演」してました。

 この小説のテーマでもありますが、中国と台湾が戦争状態になった場合、台湾海峡を中国のキロ級潜水艦が守る展開になると、アメリカの空母の動きが封じられる可能性がある、と言われています。中国のキロ級と日本の海自が闘うなんてことが小説の世界以外で起こらないよう願っています。


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