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フランス版のプラトーン。『いのちの戦場-アルジェリア1959-』 [映画]

 *映画のあらすじに触れていますので、未見の方は注意して下さい。

 思ってたよりずっと重たくて、良い戦争映画でした。

 お話は…フランスのベトナム戦争とされるアルジェリア戦争が舞台。アルジェリアの独立革命に軍事介入したフランス軍部隊に派遣された若い人道主義者の中尉テリアン(ブノワ・マジメル)。部下が捕虜を拷問しようとすると止めさせ、上官の捕虜銃殺の命令を軍法会議覚悟で拒否する。そんなテリアンを「いずれ変わる」と突き放す上官は第二次世界大戦でドイツ軍に拷問された過去を持つ。
 テリアンが村人を部下の拷問から救った村は夜間に民族解放戦線に襲われ、皆殺しにされる。負傷の末、やっと除隊が認められた部下が解放戦線に目の前で惨殺される。やがて、女性に扮装した解放戦線の兵でさえ狙撃に慎重になり見逃そうとしていたテリアンが変わり始める。自ら拷問に手を下し、狂ったように敵を憎み始める。罪もない行商の女性を早まって射殺してしまう。皆殺しになった村で唯一生き残り、侵略者側とはいえテリアンを慕っていた少年の目にも憎しみの光が宿り始める…てな感じです。

  いのちの戦場.jpg (写真はパンフレット) 激重ですよ。落ち込んでる時に見ると、さらにずず~~んと…。

 待ってる間、ロビーに張り出されてる映画評のスクラップなどを読んでましたが、「月刊 軍事研究」とかミリ系の雑誌も。映画評によると、武器の時代考証などがよくできているとのことなので、戦争映画ファンにも納得の一本だと思います。

 戦闘シーンで印象に残るのは、ナパーム弾使用の場面。『地獄の黙示録』でもジャングルを焼き尽くすシーンありますが、この映画は実際にナパーム弾で人が焼かれたらどうなるか、というのを結構長く見せます。台詞で出てきますが、正規戦以外でナパーム弾使うのは違法(国際条約?)だかで、「特殊爆弾」と呼んでいます。いかに非人道的な兵器かということが分かる描写になってます。
 それと、『プライベート・ライアン』のオマハビーチ上陸シーンほか、いろんな戦争映画で出てくる旧ドイツの高性能機関銃MG42で解放戦線が反撃してくるシーン。凄まじい弾幕の中でフランス軍は一歩も動けなくなります。どのくらいの予算を使ってるのか分かりませんが、戦闘シーンのエグさと迫力はなかなかでした。

 『プラトーン』では、戦場でも良識を捨てまいとするエリアス(ウィレム・デフォー)と、戦争という現実を完全に受け入れているバーンズ(トム・ベレンジャー)が対立し、最後にクリス(チャーリー・シーン)が彼なりの正義を実行することでカタルシスが得られ、見てる方も少し救われた気分になるんですよね。
 この映画も、テリアンが現実の酷さに直面しながらも、何とか正気を保ち、何らかの形で狂気を浄化(?)して「救い」を与える映画かと思っていたんですが、ラストは皮肉に満ち、後味の悪い形で終わります。最後のシーンでテリアンは笑みを浮かべるんですが、それはもう帰る場所を失ったテリアンが罪を償ったことの安心感なのか、苦しみから逃れられたことの喜びなのか…。意味深なシーンです。

 プラトーンはベトナム戦争で米軍がやった非人道的な行為を描いたのに、ベトナム帰還兵から支持されたそうです。逆に帰還兵を被害者として描いた「タカ派」作品は支持されなかった。本当は間違っていたんじゃないか、と思ってるのに、自分たちは正しかった、と主張し続けるしんどさから解放してくれたんですね。
 フランスではアルジェリア戦争は長くタブーとされてきて、政府が正式にそれを認めたのはパンフによると1999年なんだそうです。劇中にも描写がありますが、アルジェリアは第二次大戦では(たぶん)アフリカ戦線で共にドイツと戦った仲間なんですね。で、この戦争の間もイスラム主義の民族解放戦線と敵対したり、家族を殺されたアルジェリア人がフランス軍に参加して、同胞同士で殺し合いをやったわけです。
 アルジェリア人はフランスに今もたくさんいるらしくて、サッカーで有名なジダンも元はアルジェリアの出身。前にジダンがサッカーの試合中に相手に頭突きした事件ありましたね。パンフによると、あれもこのフランスの植民地政策~独立紛争~独立後の混乱と人種差別~が遠因となっているそうです。

 そんな複雑な背景があり、しかも現在もしこりを残している問題。それも自分の国の残虐行為をえぐり出すような作品で、フランスではどんな風に受け止められたんでしょうか。ちょっと気になります。脚本はアルジェリア戦争を扱ったドキュメンタリー映画の監督さんが書いたそうで、かなり史実に忠実とか。
 映画の企画立案はテリアン役のブノワ・マジメルさんご本人なんだそう。結構なイケメン俳優だと思います。フィルモグラフィー見ると、ミラージュ戦闘機がひたすら飛び回ってる『ナイト・オブ・ザ・スカイ』という漫画みたいな映画に出てたの覚えてますが、かなりな硬派な俳優さんなんですね。

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まる

今、私のやっているのはヤ○ーパート○ーです。○フーは人数が多いところが選択肢があって良いかも。逆に多すぎて選ばれ辛いというのもあるかもしれないけど。笑。

とにかく、写真を載せる、マイナス要素は書かない!

これ大事。BNはパーティーもやっているから参加してみては。
by まる (2009-03-16 21:08) 

まる

↑読んだら、消してもよかですよー。
by まる (2009-03-16 21:09) 

しまうま

 まるさん

 んなぁ〜るほど。まあ、ちょっとこのどん詰まり感を何とかしたいんですよね。春からまた無間地獄が始まる…。何か全然進歩してない気がするんですよね。ずっと昔とまったく同じことやらされてる。
 じゃあ、自分はどんな仕事やりたかったんだっけ? と考えるに、これってのがないような…。じゃあ、今までの苦労って何だったんだ? とか考えたり。
by しまうま (2009-03-16 22:34) 

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