アフガンの西部劇 『攻撃ヘリ ハインドを撃て』 [小説・本]
戦闘シーンはそう派手ではないし、ハイテク武器もそう出てこないんですけど、やっぱ題名がかっこいい作品は内容もいい(?)です。なんたって「攻撃ヘリ 〈ハインド〉を撃て」ですから。
『風の谷のナウシカ』に出てくる王蟲みたいなミル24ハインド。こいつはその昆虫っぽいインパクトあるスタイルもそうだけど、軍事サスペンス小説には欠かせない「キャスト」なのです。実力はあのアフガンのムジャヒディンをビビらせた暴れっぷりで証明済み。最新型のアパッチとかに比べると鈍重だとかよく言われますが、丸っこいどこかユーモラスな外見とその凶暴さのギャップがミリタリー作品好きの心をくすぐるのです。
お話はイギリス特殊部隊S.A.Sの大尉が当時の最新兵器、ハインドのパーツを入手するため、携帯型地対空ミサイルを持って単身アフガンに潜入。アフガンゲリラと行動をともにしながら、ボランティアでアフガン入りしていたフランス人看護婦と恋に落ちる…てな感じです。
ミサイルは旧式の「レッドアイ」で、そこがミソです。スティンガー対ハインドでは勝負にならない。旧式のレッドアイは追尾装置の性能が低いため、発射位置を確保することが重要なんですね。しかも一発撃ったら位置を特定されるため、外したら確実に機関砲やロケット弾の雨で反撃されて全滅することになる。S.A.S大尉がいかにも特殊部隊らしく、巧みに作戦を立ててハインドを次々に撃墜していきます。
しかし、ソ連軍にも切れ者のパイロットがいて、信号弾をフレア(赤外線のおとり)にして、機体の熱源を巧みに隠す飛行法を取るなどして、レッドアイを持つ大尉に1対1で勝負を挑んできます。ラストはほとんど西部劇のノリ。文章を読んでいるだけで、寒風吹きすさぶアフガニスタンの荒野に立つ2人の兵士が脳裏に浮かび、なかなか良かったです。
と言って、戦争や殺人を賛美してもおらず、命を賭けて入手したハインドの部品は結局意味をなさなくなる。プライドをかけて闘ったソ連軍パイロットもとっくにアフガン戦争に意味を見失っている。アフガン人もレッドアイで天敵のハインドを退治したイギリス人の隠された「大国の意思」をうっすら感じて突き放す。ざらっとした舌触りの無常観が残る、どことなく西部劇のような後味を感じました。
ミリタリー作品では重要な要素と思いますが、表紙の挿絵が格好いいのもこの作品の好きな点です。
うむむー、今日もマニアックですね。絵が浮かぶような文章なので、てっきり映画だと思っていたら、本のレビューだったのですか~!
とゆーことで、本日のアクセス数増加に貢献してみました(笑)私はあんなにアクセスいらないです。嫌いな人は見なくていいのに・・・。
そうそう、例の件は今のところ順調ですよ。ちょっとだけお知らせ。
by 怒れるOL 1号 (2006-06-04 00:03)
わ〜い。コメントだあ〜。怒れるOL様、ありがとう〜。
どうしてだろう…。私はインストロック、軍事サスペンス、とくれば、ビシビシビシッ! と打てば響くようなコメントが次々に……来るとは思っていませんけどね。やっぱり。身の回りに同じような趣味で話の合う人、いませんもの。
というわけで(どんなわけでもないんですけど)、自分のことを赤の他人に向かって書くって結構エネルギー使いますよね。私なんか全然プライベートなこと書いてないのにそれなりにエネルギー使ってますし…。しかも嫌悪感を感じるコメント読んだら凹むと思うんですよ。それでも書いてみる、ってきっと大変なんだろうなあ、とか。
例の件とは、いわゆる例の件ですね? 早いとこハッピーエンドになって悪意のある観客は黙らせるしかないですね。私の方は相変わらず超低空飛行ですね。
ところで、「ナイロビの蜂」見てきました! さすがきりんさんで、ホントに社会派のサスペンスでしたよ。全然ハッピーエンドじゃないし…。重いしエグイんですけど、確かに「夫婦愛」は描かれていた…。今年の社会派作品ばかり選ばれたアカデミーでノミネートされたのは伊達じゃなかったです。
by しまうま (2006-06-04 00:51)