SSブログ

中年の危機?…『団塊ボーイズ』『SS(エスエス)』 [映画]

 *映画のあらすじに触れてますので未見の方は注意して下さい。

 自分の人生って…これで良かったのかな? と思い始める今日この頃…。そういうのを「中年の危機」と言うんですね。若い頃はいろいろと将来の下らない(今思えば、ですが)ことで悩むじゃないですか。でも、中年になると、もちろん将来のことは漠然と不安に思うんだけど、過去のことで悩むんですな。そんな人たちを扱った映画を続けて見ました。

 (写真はパンフレット)

 お話は…ちょっと人生に行き詰まった弁護士のウディ(ジョン・トラボルタ)と歯科医のダグ(ティム・アレン)、自称小説家のボビー(マーティン・ローレンス)、コンピュータープログラマーのダドリー(ウィリアム・H・メイシー)の中年4人組がハーレー・ダビッドソンに乗ってアメリカ大陸横断のツーリングに行き、失っていたものを取り戻す…というと感動作みたいですが、基本はゆる~い感じのドタバタしたコメディです。
 中年版の『スタンド・バイ・ミー』みたいな感じか? アメリカでは大ヒットしたそうですが、新聞の映画評はちょっと辛めだったかな。でもまあ、ハッピーエンドで終わるし、元祖オートバイ映画といえば…あの人…がラストにちょろっと出てくるし、肩のこらないコメディ映画でした。でも、邦題は今ひとつ。原題『WILD HOGS』(ハーレー乗りのことをHOGSというそうです)そのままでいいのに。「団塊ボーイズ」なんて邦題だったら、実際におっさんが入場チケット買う時、ちょっと恥ずかしいですよね。

 もう一本は…。これは期待作でした。『SS』 エンドロールが終わってから、おまけの映像、それもストーリーに絡む重要な映像がありますよ。SSとは自動車のラリー競技における純粋なタイムアタック区間=スペシャル・ステージのことです。

 原作は大型バイク好きな人ならたいてい知ってるコミック『キリン』の東本昌平(はるもと・しょうへい)さんの『SS(エスエス)』。その緻密な作画力とスピード感のリアリティで圧倒的な支持があります。『キリン』(物語の最初の方)も『SS』も私の解釈では中年の危機を描いたもの。歳取るにつれて、失うものがあって、負けることも増えてきて、何と言うか…負け続けていることを認めてはいるんだけど、それに甘んじてはいない、失ったことは認めるけど、手に入らないにしてもそれを求めることは止めないのだ、みたいな立ち位置? をバイクや車とのかかわりを通して描いている作品です。
 夢を諦めないとか、そういうスコっと抜けた明るさじゃないんですよ。駄目なんだけど止めない辛いかっこよさというか。ちょっと屈折しているんです。この映画はラストでその辺がスコっと明るくて、そこは何か違う気がしたんですけど、映画にしづらそうな原作を映画にしてくれただけでも良かったです。


 (天六の手描き看板のシブイ映画館。パンフ売ってなかった)

 お話は…元学生ラリードライバー大佛(ダイブツ、哀川翔)は勤め先の自動車修理工場が経営不振で、妻(酒井法子)や2人の子供をディズニーランドに連れて行くこともできない。工場を閉めることを決めた社長からガレージにしまってあった古い車を「ボーナス代わりだ」と見せられる。それは若き日のダイブツが今は自動車評論家として成功している栗原(遠藤憲一)とコンビを組んで出場を目指した、WRCラリー用の幻のモンスターマシン、ミツビシスタリオンターボだった。事故とWRCのルール改正、結婚などで挑戦を諦めたダイブツがスタリオンターボを駆り、箱根の若い走り屋たちのタイムアタックに飛び入り参加するうち、忘れていた走りへの思いを思い出す…てな感じです。

 コミックの方の印象的な台詞が「僕は、がんばったでしょうか?」。頑張って家族や自分のために生きてきたんだけど、それで良かったのかどうか、ふと疑問に思う。そんな時、ふと口にしてしまうような台詞です。最初の方は実際の俳優と原作のイメージが違いすぎて、ちょっと違和感がありました。原作のダイブツは朴訥としたおじさん風で、元からカッコいいちょい悪オヤジ風の哀川翔さんのキャラクターじゃない。ついでに酒井法子さんがどう見ても山の手のエリートな旦那を持つ美人妻風にしか見えず、ちょっと原作の世界観と違っていたんですけど、後半はなかなか良かった。
 たぶん、低予算で短期間での撮影になったんだろうし、基本はカーアクションで若者の客を呼ばなきゃならないとか制約があっただろうし、原作とはちょっと違った雰囲気になるのも仕方ない。だから、車のシーンも派手だし、BGMはデスメタル風の激しい音楽ですが、それでもダイブツが自分の見失っていたものを取り戻した感じは伝わってきました。

 もひとつ、良かったのは大きな自動車メーカーがサポートしていないらしいところ(エンドロール見て)。だから、ダイブツが乗るスタリオンはミツビシの車ですが、他の出てくる車が特定のメーカーに偏っておらず、R32のGTRとかポルシェとかインプレッサとか、ラストで栗原がダイブツに挑む時に乗るWRC仕様のフォード・フォーカス(だと思う。ここは原作とは違っていたと思う)とかいろいろ出てきます。どっかのメーカーのサポート受けてると、特定の車ばっかりかっこ良かったり、何度も映ったり、明らかに不自然になりますから。
 映画館は東本作品のファンっぽいライダー風の人とかカップルが約10人くらい。外の寒さから避難してきた感じの路上生活のおっちゃんやおばちゃんが約10人くらいでした。まぁ、しんどいことはいろいろあるけど、元気出していかなきゃいかんですよね。そんな映画だと思います。上記2作とも。


nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 2

mana

>元祖オートバイ映画といえば…あの人…
チョッパーハンドル(でしたっけ?)のオートバイが出てくる映画の俳優さんですね。(観たことないけど…)(^^;

チケットが買い難い邦題かもしれませんね。
原題『HOGS』って、そういう意味なんですね。
勉強になりました。m(__)m
by mana (2008-03-28 19:06) 

しまうま

 manaさん

 そうです。あの映画。アメリカンニューシネマの名作ですね。私もリアルタイムで見たんじゃありませんけど、20年前の大学生時代、今はもうつぶれちゃった京都の名画座で見ました。
 銭湯に行くとB5判ぐらいのその映画館のチラシがコーヒー牛乳とか売ってる冷蔵庫の上に置いてあって、「あの映画」のチラシは長距離ツーリング行く時にバイクのタンクバッグの中に入れて走ってました。
by しまうま (2008-03-29 11:57) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。