SSブログ

映画『ユナイテッド93』 [映画]

 *文章中に映画のストーリーに触れている部分がありますので、未見の方は注意して下さい


 アメリカでは批判と賞賛の両方の声があったという話題作、見てきました。感想は一言で言うと、最初から最後まですごい緊張感の連続です。まるでドキュメンタリー見てるみたいな感じです。ちょっと変わった映画を見た、という印象が残ります。
 私、割と映画見てる方ですが、それでも知ってる顔の俳優はひとりも出てこない。それに加えて、ストーリーの中に「主役」と言えそうな人物がまったく存在しない。すご〜くリアリティのある再現ドラマみたいなんです。

 監督さんが『ボーン・スプレマシー』と同じ人らしくて、あの映画見た人は感じると思いますが、リアリティを出す効果をねらってるのか、この作品もカメラが手持ちなのか、画面がブレまくりで、私は平気でしたけど、気になる人はいるかも。

 で、ですね。じゃあ、すごく感動したか、というと残念ながらそうでもない。パンフレットによると、ユナイテッド93を取り上げたアメリカのテレビドラマは既にあるそうで、そっちはややヒューマンドラマの味付けがしてあるそうですが、このドラマは遺族とか世論に配慮したのか、リアリティにこだわったためか、良くも悪くもストーリーの「盛り上がり」がないんです。ずっと山場と言えばそうとも言えるかも。
 カタルシスがないっていうか。とにかくすごい緊張感で、「凄いものを見た」という感覚は残るんですけど、言ってみれば「神の視座」で、恐ろしい歴史的な大事件を追体験した、という感覚に近いかな。見終わってから、「悲しい」とか「癒された」とかの何なりの感情が湧いてこないんですね。

 エンドロールのキャストを見てると、「本人」というクレジットがやたら多い。こんな映画も初めて見ました。ホワイトハウスへの突入を防いだ(か、見ようによっては、何とか自分たちの力で生き残ろうとして機を奪い返そうとした結果、墜落した)乗客の勇気は感動的なんでしょうが、テーマのあまりの重さに恐れをなしたのか、映画とかドラマに必要なはずの「主観」が欠けている気がしました。
 映画が終わった時、何人かの人は「えっ! 終わったの?」という感じで席を立ってました。


nice!(1)  コメント(6)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 6

お邪魔します~
この映画、観ようかどうか迷ってます~
リアリティがあるっていうのが何となく恐くて。
「ワールドトレードセンター」もありますけど、9.11の映画化ってアメリカではどう受け止められているのでしょうかね?
by (2006-08-13 00:52) 

しまうま

maintenantさん

 初めまして〜。

 映画のクオリティ自体はかなり高いんじゃないでしょうか。決して悪い映画じゃないです。ただ、「主人公」にあたる人が出てこないから、私たちが観客として感情移入する人がいないというか。
 アメリカの人が見たら、あの事件は日本人の私たちよりもっと心の奥の方にトラウマとして残っているわけで、感じ方が違うのかもしれませんね。まだまだ記憶に生々しい分、何らかの解釈とか主観を加えて「ドラマ」に仕立てるのが難しかったのかもしれませんね。

 「ワールドトレードセンター」は救出に向かって奇跡的に助かった警察官の話だし、前評判はかなりいいらしいですよね。オリバー・ストーンって硬派の監督だから、私はかなり楽しみです。
by しまうま (2006-08-13 02:21) 

mana

リアリティを出すために、無名の俳優さんを起用し、
台詞も俳優さんのアドリブが多少入っているとか…
不謹慎ですが、寝ぼけていたせいもあり、
事故当日の朝方、TVに映し出された画面はドラマを見ているようでした…
by mana (2006-08-13 09:26) 

しまうま

manaさん

 そうですね。BGMもかなり控えめ、というか、ほんの最後の方しか鳴らなかったような気がします。徹底的にリアリティにこだわった演出は当たっている、と思います。逆に言うと、劇場中に「悲しい」や「うれしい」BGMや効果音が鳴り響き、都合の良い時に都合の良い人が死んだり助かったりする映画を見過ぎたから物足りなく感じるのかな?

 事件の当日は、私はタクシーの中の小さなテレビで2機目の衝突を見ました。そのまんま会社に引き返し、まる2日、徹夜になりました。あまり取り上げられないけど、ビルにいた日本人ビジネスマンも大勢亡くなったんですよね…。
by しまうま (2006-08-13 11:52) 

怒れるOL 1号

あまり映画マニアでない私も気になっていて、来週あたり彼と行こうかと話していたんですよ。ふむふむ、緊張しっぱなしなんですか~。心して臨みます。
by 怒れるOL 1号 (2006-08-13 23:09) 

しまうま

 おっ、怒れるOLさん、お久しぶりです。

 う〜む…デートムービーとしては、かな〜り重いですよ。
 映画のシーンで、管制官(確か実在の人が本人を演じてる)が「今、全米の上空を飛んでる飛行機は何機なんだ!」と叫ぶと、「4200」(だったかな? うろ覚え)って数字が帰ってきます。もうほとんど、アメリカ人にとって、飛行機って山手線みたいな感覚なんでしょうね。
 
 NHKスペシャルで、アメリカ製の飛行機のジェットエンジンが金属疲労から刃こぼれを起こし、火を噴いて壊れる事故が相次いでいることに対する日米航空会社の対応の違いを取り上げていておもしろかったです。
 片側のエンジンからボンッ! って火を噴いて、緊急着陸(ジャンボ機は片肺でも十分安全に着陸できるそうです)するニュース映像見て、青ざめる日本の乗客。それに対し、アメリカではエンジンの片方が火を噴いて着陸しても別にニュースにならないんだそうです。「機械なんだから壊れるのは当たり前」って感覚で。

 私はそうかな〜と思いましたけど。日航123便の事故を経験した日本人としては…。と思ったけど、アメリカでも大きな墜落事故は起きてますもんね。エンジンが火噴いたら嫌だなあ…。私は。

 話は戻って…。飛行機に乗ることの感覚の違い(私は国内便で何年かに1回って頻度)なんかも、ハイジャックとか航空機テロに対する恐怖の皮膚感覚の差みたいなものにつながってくるかもしれませんね。
by しまうま (2006-08-14 00:44) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。