SSブログ

「ツナミ」で米本土を攻撃。『シミタール SL-2』 [小説・本]

 *小説のあらすじに触れてますので、未読の方は注意して下さい。

 本のレビューの方は久しぶりです。本を読んでないことはなかったんですけど、軍事サスペンスの新刊文庫本があまり出てなくて、久しぶりに読んだのがこれ。この作品は前に書いた『原潜バラクーダ奇襲』の続編にあたる作品のようです。

 前回、チタン製の船殻を持つシエラ級改「バラクーダ」とロシア製巡航ミサイル「グラニート」を使ってアメリカ本土の発電所やらのライフラインを破壊した英特殊部隊SAS出身のハマス司令官ラーヴィー・ラシュードが2隻目の「バラクーダ2」とグラニートを使って大暴れするんですが、今回の作品はストーリー的にはちょっと肩透かしでした。作品の「シミタール」は核弾頭搭載型のグラニートミサイルの劇中の作戦名です。

  シミタール.jpg 『シミタール SL-2』(角川文庫) 挿絵はめっちゃかっこいいですね。

 お話は…ラシュードはロシアから中国を介して買ったバラクーダ2と、北朝鮮から買った通常弾頭と核弾頭のグラニート巡航ミサイルを使い、カナリア諸島の活火山を核弾頭で攻撃、大規模な津波による米本土攻撃を計画。津波攻撃の前にアメリカ政府に通常弾頭攻撃による火山噴火テロを実行、実力を見せ付けた上で、津波攻撃を止める条件として中東の駐留米軍の完全撤退とパレスチナ国家のイスラエル承認を求める。
 一方、アメリカ側は軍事作戦に消極的な民主党大統領をNSA長官らが超法規的行動で降板させ、軍事作戦に理解のある副大統領を昇格させる。前例のない大規模な市民の避難計画を進め、巡航ミサイルに不可欠なGPS衛星の作動を停止させ、バラクーダ2を近海までおびき寄せる…てな感じです。

 今回もチタン船殻を持つ高性能原潜を第2の主人公にしているのに、手に汗握る水中戦とかはなし。その代わり、核弾頭を使った「メガツナミ」攻撃に備えて、米主要都市から市民や政府機関を避難させたり、軍幹部が民主党大統領をこき下ろしたり、無理やり辞めさせたりとかの冗長なくだりが続きます。
 GPSを切られて遠距離からの巡航ミサイル発射を封じられたバラクーダ2がカナリア諸島の近海まで接近せざるを得なくなり、接近してマニュアル照準でミサイルを発射するものの、あっけなく対潜ヘリに捕らえられるし、結末は結構あっさりしてます。

 前作では沈着冷静で無為な殺人を犯さなかった元SASのハマス司令官はターゲットの火山を視察している最中に引退した元NSA長官に写真を撮られるし、拉致したイギリスの火山学者を特殊部隊独特の殺人術で殺して分かりやすい証拠を残すし、準備万端で米国のフリゲート艦や対潜ヘリが待ち構える海域へ何百億というカネを払って(北朝鮮は2基の核弾頭を含むロシア製のコピーの巡航ミサイル一式を500億円で売る)手に入れた潜水艦と弾頭を送り込むしで、何だか荒っぽい話になってました。

 また、全体にNSA率いる軍が暴走しがちで、大統領は強引にクビにしちゃうし、ヨーロッパ運営のGPS衛星の動作停止に同意しなかったフランスを「衛星を撃墜するぞ」と脅かすし、超法規的に戒厳令を敷いてマスコミも管理下に置いちゃうし、実際にこんなことがあったら、もはや民主国家じゃなくなっちゃう。それでも最後はにっくきアラブ人テロリストからアメリカを守ったヒーローを称えてめでたしめでたしになってて、ちょっと辟易としてしまいます。

 途中で勝手に別のあらすじを考えてみたんですが、もし私が作者なら、核弾頭で火山を撃ち抜き、津波を使った攻撃をやるぞと見せかけて米海軍主力を陽動し、主要都市から一般市民を避難させた上で、手薄になった別の沿岸から主要都市のインフラを破壊するというお話にするかな。いたずらに人命を奪うことなくアメリカの政治・経済の中枢を叩き、国力を弱らせるのです。ドル安を誘って為替相場でインサイダー取引をやるという筋立てでもシブいかな。

 米国海軍が待ち受けている場所に高性能原潜で攻め込むんだから、潜水艦や水上艦との派手な戦闘シーンをもうちょっと読みたかったかなあ。

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。