映画『沈まぬ太陽』 [映画]
*あらすじに触れてますので、未見の方はご注意ください。
ちょっと最近お疲れ気味の私。ここは働く中間管理職サラリーマンに勇気を与える映画を! ということで、話題作「沈まぬ太陽」見てきました。この映画、テレビや新聞の大スポンサーの日航が映画化に抵抗したため、電通などの大手広告代理店がスポンサーにつかなかったとか。舞台あいさつで主演の渡辺謙が男泣きしていたのも印象に残ってました。
お話は、日本航空がモデルの国民航空を舞台に、御巣鷹の尾根の墜落事故と、政界をも巻き込んだ権力闘争という二つの軸を物語の中心として、労組委員長として活躍した恩地元(渡辺健)が巨大企業の権力闘争にもまれ、時には自分の立ち位置に苦悩しながら、サラリーマンとして、人として、筋を通した生き方を模索するさまを描いた作品…なのかな?
たぶん本当は群像劇のはずなのに、渡辺謙という大スターを呼んでしまったからなのか、恩地以外の人物の掘り下げ方が中途半端な感じがして、いまひとつこなれきってないような気がします。それと、ハリウッド映画に慣れちゃったからなのか、他の俳優に比べて渡辺謙だけちょっと浮いちゃってる(オーバーアクション気味?)ような気も。空港を飛び立つ国民航空のエンブレムを付けたジャンボ機のCGもちょっとチープでした。演技派の俳優がずらっと並んでるだけに、ここだけ特に妙に気になった。
原作の山崎豊子さんの小説は読んだことないんですけど、週刊誌などで問題点が指摘されたことがあったような気がします(うろ覚え)。実際、物語では労組委員長を務めた恩地のキャリアが彼のサラリーマン人生を苦しめるんですけど、東大を出て、巨大企業の労組幹部だったら、普通ならエリートコースのはず。
それに、恩地の娘が「アカ(共産党)の娘」となじられる場面がありますが、巨大企業の労組委員長という立場に対してその言葉は違うだろ…とこれも違和感持ちました。左遷された恩地の娘が学校でいじめられたと手紙を寄こす場面も、「学校でそんなこと(組合活動に絡んだ左遷人事)言うかな?」とか。左遷にしてはパキスタンとかイラン、ケニアと海外を転戦していて、優雅な左遷だな…とか(地方都市の支店管理職にさせられるとかならともかく)。
時の首相や財界フィクサー(たぶん瀬島龍三がモデル)も絡めた国民航空内の権力闘争が結構リアルなだけに、恩地が社内で疎まれる事情や背景が今のこの不景気に苦しむサラリーマンの視点から見ると何だか薄っぺらいし、それに苦悩する恩地にも感情移入できないのです(私の方がよっぽどひどいサラリーマン生活送ってるよ…という人多いと思う…)。
とは言え、この作品をして、「当社を不当に貶めている」と怒ったらしい日航のエライさんはこれまたヘンだなあ、と思います。上層部はともかく、恩地や現場の社員は仕事にプライドを持ち、みんな飛行機が大好きなんですね。安全を祈って飛び立つ自社機に整備士が手を振るシーンとかあります。恩地やその仲間も、自分の会社が好きだから、事故で失墜した信頼を回復しようとして外部から会長を招き、会社を立て直そうと奮闘する。自分の会社をこれだけ好きな社員がいるっていい会社じゃないですか。私はうらやましいなあと思ったなあ。
最近ニュースをにぎわせている日航の経営問題って、政治家の影響力で利用客の少ない地方空港にも無理して飛行機を飛ばし続けたり、国の特別会計の上にあぐらをかいた姿勢が赤字体質の根源だったって指摘されてますよね。
だから、本当は恩地個人のエピソードなんかは薄めにして、もっと社内の権力闘争に軸足を移して、今の日航の姿を予期したような内容にしたら、もっとおもしろかったかもしれません。
この映画でも取り上げられている御巣鷹の尾根の事故ですが、520人が一度に亡くなったという事実は、どんな形で映像になっても、やはり心を動かされてしまう。尼崎で起きたJR西日本の脱線事故もいつかこのような形でドラマ化されるのかなあ、などとふと思いました。
関西人としては、最後の2行に胸がつまりました。
by ひょう (2009-11-18 00:44)
ひょうさん nice!ありがとうございます。
尼崎の事故現場は何度か前を通ったことがあるんですけど、日航機事故と違って、普通の街中なので、そこだけ時間が止まっているような不思議な場所でした。マンションもほとんど手付かずの状態みたいで。
100人以上の人命が一度に奪われた場所ですから、そう簡単には処分を決められないんでしょうが、そこだけ空気が重たいような、特別な場所という雰囲気です。
JRも元は国営企業だし、複雑な労組関係を抱えているようだし、きっと日航と似たような問題を抱えていたのでしょうね。
by しまうま (2009-11-18 12:34)
ちょっと最近お疲れ気味の私。
ブログもさぼっておりました。
この映画も観ようか迷ったんですがとっても長そうでまだ観ていません。
(と、言いつつ「アラビアのロレンス/完全版」は観に行ったんですが。)
話は変わりますが最近(前からですか?)変なコメントの書きこみ多いですよね、これってこまめに削除するしか方法は無いんでしょうか。
by キキ (2009-11-29 19:45)
キキさん nice!ありがとうございます。
そうですね〜。お互いにちょっとお疲れさまです。この映画、途中の休憩時間が何だかちょっと懐かしかったですね。むか〜しの映画はそんなのがあったような。私の大好きな「バルジ大作戦」は休憩時間の映像もそのままビデオに入ってますし。
今日はな〜んも考えなくていい映画にしようと思って、割と好きなキャサリン・ゼタ・ジョーンズが出てる「理想の彼氏」見てきましたよ。女性一人で来てる人もちらほら。前半がちょっとグダグダで、途中で帰りそうになりましたけど、ラストはまあまあ良かったです。
ヘンなコメントはあの、お菓子の箱とかについてるクッションの小さなプチプチ(分かります?)をつぶす感覚で徹底的にマメに消すしかないですねえ。
by しまうま (2009-11-29 23:19)