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強烈な戦闘シーン。『戦場のレクイエム』 [映画]

 *映画のあらすじに触れてますので、未見の方は注意してください。

 いや~最近、ちょっと仕事でお疲れ気味で…。いろいろ人間関係とかも…。こんな時はちょっと心が温まるハートウォーミングなコメディとかロマンチックコメディを…見ようと思ったんですけど…何故か戦争映画に…。

 この映画、テレビで「プライベート・ライアンに匹敵する戦闘シーン」って言ってましたが、ホンマにそうでした。全部で3回、大きな戦闘シーンがありますけど、も~う砲の直撃を受けて体がちぎれた兵士からあっという間に体液が流れ出て死んでしまう、狙撃兵に頚動脈を撃たれて血を噴き出しながら死ぬ、戦車と闘おうとして火炎瓶を持ったまま撃たれて自爆して全身やけどで死ぬ…すごいリアリティです。

  レクイエム.jpg (写真はパンフレット)

 お話は…毛沢東率いる人民解放軍と蒋介石率いる国民党軍が激突する中国内戦。グー・ズー・ティ率いる連隊が国民党軍を包囲するも、罠にかかって仕掛け爆弾で痛烈な反撃を受ける。降伏した国民党軍を射殺するよう命じるグー。その責を問われ、とある炭鉱を陣地として国民党軍を迎え撃つ任務を与えられる。
 米軍の最新装備で固めた国民党軍の攻撃に対し、旧式の武器とたった48人の兵士で陣地を守るグー。撤退のラッパが聞こえたら炭鉱を放棄し、友軍と合流する手はずだが、国民党軍の波状攻撃に次々に仲間が死んでいく中、撤退のラッパがなかなか鳴らない。戦車砲の至近弾を受けて耳が聞こえなくなるグー。何度目かの激しい攻撃をしのいだ後、全身にやけどを負った部下が「ラッパが聞こえました…」と言い残して息を引き取る。このままでは全滅することは間違いない。撤退のラッパは果たして鳴っていたのか…。

 特撮には朝鮮戦争を描いた超ハードな戦争映画『ブラザーフッド』を撮った韓国のチームが協力したらしく、チープさを微塵も感じません。戦車詳しくないんですが、国民党軍との戦闘やグーが義勇兵として参加する朝鮮戦争に出てくるシャーマン(かな?)戦車が何となく市販のブルドーザーか何かを改造したっぽい雰囲気(キャタピラのところの走輪がスッカスカなので)で、『プライベート・ライアン』に出てきた模造のタイガー戦車(旧ソ連のT55戦車を改造したとか)ほどの恐ろしさがなかったことがちょっと気になったぐらい。

 あらすじもうまい。グーは懲罰房のような場所で、戦闘中に失禁したことを責められている元教師の兵士と知り合う。全然戦争に向いてないインテリで、最初は炭鉱の陣地で砲撃を受けて逃げまどうんですが、だんだんに兵士として一人前になっていく。他の兵士は文盲で、家族への手紙を書いても知らない字は飛ばして書いている。グーが元教師に「(死んだ兵士の)手紙の字を埋めてやれ」と言うシーンとか、最期にグーにお礼を言うシーンとか、ちょっとおっさんの涙腺が危うい。なんか「プライベート・ライアン」に似てる気もするが…。この元教師はアパムかな?

 政治や軍の機構も確立していなかった時代。グーが率いた部隊の名簿もなく、名誉の戦死と認められません。戦友のためにグーが戦後も手がかりを求めてさまよい、朝鮮戦争で知り合った軍幹部の手助けなどで最後は全員の名誉が回復される。
 全体を通して、戦争の凄まじさ、悲惨さは描かれてはいるんですが、国民党軍はにっくき敵として描かれる以上でも以下でもなく、同じ民族同士が殺しあったことの空しさや悲しみはあまり描かれない。まあ、中国と台湾の関係を考えたら、この辺がギリギリなのかもしれない。

 たぶん人民解放軍の協力で撮影してるんでしょうが、軍はちょっと官僚的な部分が描かれてますが、基本的にはいい人ばっかり。ラストで、全滅した戦友に勲章が送られる。「今の中国があるのはこんなに苦しい戦争を闘った世代がいたからなんだよ」ということが言いたいのかな。その辺もちょっと『プライベート・ライアン』に似てるかも。私はあの映画は大好きだし、反戦のメッセージを感じることができますが、アメリカでは保守的な層にも受け入れられたそうですし。

 とはいえ、この映画が中国ばんざ~い、人民解放軍ばんざ~いってだけの映画かと言うと、そうでもない気がします。愛国心が強い
中国国民に受け入れられる話にして、(実際にそんな干渉があるかどうか知りませんが)政府や軍の機嫌を損ねないようなバランスを保ちつつ、「戦争というものはこんなに空しいものなのだ」ということは伝わってくるので、ちゃんとした戦争映画になってると思います。劇中、グーが死んだ戦友を弔うために無名戦士の墓を参るのですが、名前も何もない木の墓標が何もない原っぱみたいな場所に見渡す限り並んでいる場面は胸に迫ります。

 ラストで、炭鉱の陣地を守って死んでいった戦友の墓の前で軍の偉いさんに任務終了を報告するグー。改めて撤退のラッパが吹かれ、正式に戦功を認められた戦友に勲章が送られます。めでたしめでたしのシーンですが、代表して勲章を受け取るグーには笑顔がありません。
 グー役の俳優さん、中国ではそんなに有名な人ではないそうですが、目力が凄く、なかなかの演技でした。


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teppei

ほ~、しまうまさんてばけっこう映画にかよってますね!
オイラはめったに行かないのでね・・・
うむぅ、ちょっとは自分を見直すためにももっと色々な事に触れなければいかんな。。。

by teppei (2009-02-12 21:07) 

しまうま

 teppeiさん

 いや~違うんですよ。仕事の関係で、休日でも結構呼び出しがある時もあったりして(今はそうでもないんですが)、なかなか遠出する遊びに行けないし、休みの日でも会社に戻れる場所で過ごすことが多くて、それで映画しか行くところがなかっただけですよ。

 人手不足の会社はツラいですよ…。本当は若い時からもっとスキーとか海とか旅行とか行ってみたかったっす! もう無理だな…。
 teppeiさんはアウトドア派みたいだから、映画館の中に2時間じっと座ってるのって…結構苦痛なんじゃないですか?
by しまうま (2009-02-12 22:41) 

ひょう

面白そうな映画ですね・・・・
でも怖そうだから、観に行けない・・・・。
やっぱり、「マンマ・ミーア!」にしておきます・・・・。
by ひょう (2009-02-12 23:31) 

しまうま

 ひょうさん nice!ありがとうございます。

 そうですね~。マンマ・ミーア!の方が無難な気がします…。ヘビー級の重さの映画なんで…。イケメンも出てこないし…。
by しまうま (2009-02-13 19:54) 

キキ

こんにちは。
うわ。ハートウォーミングなラブコメとは逆の映画でしたね。
『ブラザーフット』は確かに戦闘シーンが見事でしたから
あんな感じよりもっと悲壮感があるんでしょうね。(-.-;
観たいけど体が引きちぎられて絶命シーンですかぁ。
イケメン出ないんですかぁ。←重要。(笑
by キキ (2009-02-14 07:58) 

しまうま

 キキさん nice!ありがとうございます。

 そうですよ~。も~う、どうやって撮ってるのかな? って凄まじい場面が結構ありました。そうそう。寒いシーンで、吐く息が真っ白で、本当に寒い場所でロケやってるのにも感心しました。模造の雪を使ったりせずに、本当の雪をバックに戦闘シーンを撮ってるようでした。

 イケメン度は…う~ん…主人公の人は見ようによっては…亡くなった俳優の田村高広を若くした感じのような……。元教師の役の人は韓流ドラマで頼りない彼氏役とかやりそうな感じかな。全編、みんな顔が真っ黒で(炭鉱で戦ってるから)、顔がよく分かりません。

 よし! じゃあ、この週末は…ハートウォーミング系を…と言いつつ、また戦争映画に行ってしまうかも…。ダニエル・クレイグがドイツ軍に迫害されるユダヤ人の役やってる作品の引力が…。
by しまうま (2009-02-14 17:44) 

duke

忙しすぎて映画しか、っていうのわかります。
友達と約束しようにも予定がわからないし、あいた時間にさくっとできる娯楽として映画はいいんですよね。
戦争映画は、きれいごとだとウソなのはわかるのですが、あまりにリアルなのも辛いです。。。プライベートライアン位が私には限度かも・・・。
by duke (2009-02-18 01:07) 

しまうま

 dukeさん nice! ありがとうございます。

 そうなんですよね〜。今はそんなに頻繁にあるわけじゃないんですけど、それでも連絡の付きづらい場所にいると、何となく落ち着きません。

 戦争映画は…何で好きになったのかなぁ…。私は戦争について何らかのメッセージを感じられたら、それは立派な戦争映画だと思うんですよ。そのくくりで言ったら、『ひまわり』とか『サウンドオブミュージック』も戦争映画です。
 そんな映画がヒットしたり名作と称えられるってことは「こんな無意味なこと、いつかやめなきゃいかんよね」って考える人がまだ世の中にたくさんいるってことですから、それで少しホッとした気持ちになるからなんですかね。
by しまうま (2009-02-18 21:13) 

ドイツ特派員

戦争映画、私は「フルメタルジャケット」とか「遠すぎた橋」くらいですかね、もとより殆ど映画を見ないんで。
最近の技術だと極限までリアルに見せることは可能になっていますから、センセーショナルな画像は直ぐにできると思うんですよ。そこで、それを超えるドラマがどう書けるか、が重要な気がしますね。
しまうまさんもそろそろまったりした映画の方がよかったりして(同情)。
by ドイツ特派員 (2009-02-22 19:25) 

しまうま

 ドイツ特派員さん

 こんばんは~。仕事とか人生のもろもろについてアツ~く語ってますねえ。私もいろいろ考えるところあるんですけど、なかなか気の利いたコメント出てこなくて。

 「フルメタルジャケット」は映画館で見ましたねえ。あれも別の意味でエグイ映画でした。そろそろまったりした映画見たいんですが、職場の方でいろいろ人間関係がすさんでたりして…。
by しまうま (2009-02-22 23:43) 

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