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米独の駆逐艦と潜水艦の戦い。『U307を雷撃せよ』 [小説・本]

 *小説のあらすじに触れていますので、未読の方は注意して下さい。

 NHKのニュース(クローズアップ現代だったかな?)見てたら、現代人はベストセラーランキングを元に本を買う傾向が強いとか。だから、時間をかけて売る良い作品が売れにくくなっているそうです。そんなご時世で、ワンパターンのあらすじが多いにもかかわらず、浮気をしないで買い続ける軍事サスペンス小説の固定ファンが少数ながらいるわけです。
 私は本格的なミリさんではありませんが(ちょいミリオヤジなので)、ベストセラーランキングと言った他人の評価に左右されず、頑としてワンパターンのあらすじにはまる。これぞ漢の小説の楽しみ方ではありませんか。……とか何とか適当なことを書きつつ。

 お話は…。ドイツで環境保護派の政党が政権を握り、国内の全原発の操業停止を決定。深刻なエネルギー危機を迎えたドイツはテロ支援国家として国連から武器禁輸措置を受けている中東の架空の国「シラジ」へ最新型の武器を販売、見返りに石油を入手する取引に踏み切る。
 目玉は米最新型原潜に匹敵する性能を持つ212B型ディーゼル潜水艦。燃料電池を搭載し、従来のディーゼル艦より長時間もぐっていられる。そんな中、アメリカの英国大使館に生物兵器を使ったシラジのバイオテロが実行される。シラジへの武器密輸を警戒していた英駆逐艦と、潜水艦を護衛していたドイツ軍のユーロファイター・タイフーンが偶発的に交戦する事件も発生する。
 ドイツは212Bを4隻、シラジまで運ぼうとしますが、武器禁輸措置を守ろうとする米海軍駆逐艦も阻止活動に加わる。しかし、高性能な212B型Uボートは駆逐艦を撃沈、逃走する。
 一方、英国の情報機関の調査でシラジのバイオテロをドイツは事前に知っていたことが分かった。激高し、ドイツとの全面開戦を主張する英国に対し、アメリカは同隻数の駆逐艦をもって212Bをすべて撃沈してドイツの国際的信用を貶め、ドイツ首相を退陣に追い込むことで英国に開戦を思いとどまらせようとする。4隻のUボート対4隻の駆逐艦の死力を尽くした戦いが世界全面戦争を止めるカギとなる…てな感じです。

 U307上.jpg U307下.jpg 『U307を雷撃せよ』 ジェフ・エドワーズ著 上・下 (文春文庫)

 「チャフのポッドが花を咲かせるのを待たずに、ディロンは無線で呼び掛けた。『潜水艦搭載型艦対空ミサイル! Sub-SAMです! こちらウルフハウンド87。繰り返します。潜水艦の発射した艦対空ミサイルがこちらに向かっています、どうぞ!』」(上巻p264)

 ドイツ製212B潜水艦、対潜哨戒ヘリが飛んでくると水中発射の対空ミサイルで落としちゃうし、静粛性、水中速力を生かして最新鋭の米駆逐艦と互角に渡り合います。ちょこっとだけですが、ユーロファイター・タイフーンがコルモラン対艦ミサイルでイギリスの駆逐艦と戦う場面があり、なかなかかっこいいです。ユーロファイターはスタイルはいまいちですが、性能は凄いらしいので、もっと小説に出てきてほしいですね。

 著者は米海軍の元駆逐艦乗りの人らしくて、対潜戦闘の描写は詳しい。一方で、潜水艦の操艦術などの描写は少なく、潜水艦そのものにはあまり詳しくないのかなという印象。前半で中国が弾道ミサイルの発射テストをやって選挙を控えた台湾を威嚇する場面があって、作品の最後は大統領が緊急電話で叩き起こされ、「どこだ?」「中国です」というやり取りで終わっています。と言うことは、対中国をテーマにした続編があるってことですね

 
強硬な環境保護派が政権を取ったからといって、国連決議に違反してまで石油を手に入れるようなことを国として実行に移すかなというのと、駆逐艦や潜水艦を互いに何隻も沈められて、首相の退任ぐらいで手打ちできるのか、とか所々変なところはあるような気はしますし、元軍人が書いた本(この本を書いてる時はまだ現役だったらしい)らしく、国際政治とか情報機関の動きなどを絡めた立体的なストーリー運びは少なくて、戦闘シミュレーションみたいな描写が目立ちますけど、まあまあおもしろかった。


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