戻ってきた本。 [小説・本]
宅急便で知人の家から戻ってきた荷物の中に長らく貸しっぱなしになっていた本があった。すっかり忘れていたけど、良い本だった。前に『真実のマレーネ・ディートリッヒ』という映画を紹介したことがありましたが、ディートリッヒと同じで、大きな時代の波にもまれながら、自分が正しいと思う生き方を貫いた強く美しい女性の物語です。
『最も美しく ベラ・チャスラフスカ』(後藤正治著)文藝春秋
新聞の書評欄でも結構取り上げられていたので、それなりに売れたのではないかと思うんだけど、ベストセラーの欄では見なかったかなあ。ジャンルは著者からも分かるかもしれないけど、いわゆるスポーツノンフィクション。
読み返していないので、内容はちょっとうろ覚えですが、チェコの女子体操選手、ベラ・チャスラフスカが旧ソ連のチェコ侵攻、いわゆるプラハの春に有名スポーツ選手として抗議の署名に名を連ね、そのために民主革命失敗後のチェコで政府から冷遇される。署名を撤回すれば復権させると持ちかけられるのに、毅然として断り続けるのです。
東京オリンピックで金メダルを取ったにもかかわらず、チャスラフスカはメキシコオリンピックへの出場が危ぶまれる。やっとのことで出場したチェコ女子体操チームのコスチュームは黒。暴力で民主化を踏みにじったソ連への抗議の意思表示だったそうです。
チャスラフスカはソ連崩壊後のチェコで復権するんだけど、最後は家族に起きた不幸な事件を契機に精神を病んでしまい、人里離れた町でひっそりと暮らすことになります。著者の書面インタビューで、どうしてプラハの春の時の抗議の署名を撤回しなかったのか、という問いに対し、チャスラフスカは「節義のために。それが正しいとする気持ちはその後も変わらなかったから」と答えるのです。「節義のために」。人の心の芯を揺さぶる言葉ではありませんか。
そんなベラ・チャスラフスカの凛とした生き様を旧ソ連や当時の日本のライバル体操選手や、現代の選手達の証言を通じて浮かび上がらせていく。メキシコオリンピックで祖国の希望を一身に背負ったチャスラフスカと闘ったソ連の妖精ナタリア・クチンスカヤらライバル達の思いやりあふれる証言も読ませるものでした。最初に読んだ時は本なのにちょっと涙腺が危うかったです。
しまうまさん、
何というかですねえ、お互い会社員をやっていると心が汚れてくるのがわかりませんか?信念より妥協、忠誠より保身、正義より追従....。うーん、私だけだろうか?
こういう存在が思想である人には、自分基準なのでしょう。私が好きなのはチェゲバラなのですが、やはり自分の信念・自分への忠誠・自分への正義で動いていることに魅かれるんだと思います。
上手く立ち回れない自分に腹を立て、立ち回っている自分にも腹を立て、ならば、しゃきっと行きたいな、と思いながら出来ない自分にまた腹を立て....。
こういうときはやはり忠誠を誓ったメタルですかね?
by ドイツ特派員 (2008-03-27 22:23)
ドイツ特派員さん こんばんは〜。
確かに…。若い連中見てると、そうだなぁ…自分もこの仕事が好きでこの会社入ったんだっけ…とふと思う時がありますねぇ…。何か仕事でも物事でも、真剣にハラ立つことが減ってきたような気もする…。ただ、昔なら理不尽な仕事でもっと怒っていた部分を「ちょっと青かったなあ」とふり返る自分もいるんですよ。
>上手く立ち回れない自分に腹を立て、立ち回っている自分に
>も腹を立て、ならば、しゃきっと行きたいな、と思いながら
>出来ない自分にまた腹を立て....。
これ、何だか分かりますね。自分がなりたいな、なるべきだなと思ってる(思っていた?)自分の姿に遠ざかりつつ近付いているような…。と言って、そういうことにこだわるのに私は少し疲れてきた感じもありますかね。ハラ立つってことは、やっぱドイツ特派員さんはまだまだアツイんですよ〜。ギターの運指もそこらの兄ちゃんに負けないくらい速いし。
ということで、こういう時はやっぱりメタルですな。
by しまうま (2008-03-27 23:18)
ひょうさん nice!ありがとうございます。
by しまうま (2008-04-04 12:24)