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海自全面協力? 『無音潜航』 [小説・本]

 *小説のあらすじを紹介してるので未読の方は注意して下さい。

 日本の軍事サスペンスものは前にちらっと読んだ作品(あえて名を伏す)は美人の空自女性パイロットが何でか分かりませんが2000万円ぐらいするスーパーカーに乗ってるイーグルドライバーと次々に難事件を解決するというもので、リアリティがさっぱりだったんでちょっと足が遠のいていたんですが(以前にひょんなことからちょこっと話ができたファントムライダーはカローラに乗ってました…)。この作品はリアリティ満点でおもしろかったです。よく行く本屋には平積みになってたのでかなり売れてるのかな?

 『無音潜航』(池上司、角川文庫)

 ソノブイは一直線上に点々と、ほぼ200メートルの間隔で落とされている。現進路だと右から4番目と5番目の間を行くことになる。…確実に捕まるな…。藤井は思案した。恐らくこの状況で考えると、ソブレメンヌイ級が搭載する対潜哨戒ヘリKa28に違いない。(p170)

 お話は…。またしても北朝鮮が悪者ですね…埼玉県所沢市の東京航空交通管制部に北朝鮮の工作員が潜入、使用済み核燃料を使った爆弾(核爆弾でなく放射性物質をばらまく爆弾)による核テロを仕掛け、日本の空を飛ぶ民間機を大混乱に陥れる。核を使った本格テロに一気に緊張を高める米国、中国、韓国。合同演習のために中国を訪問中の海自のディーゼル潜水艦「さちしお」には緊急に帰還命令が下る。
 一方で、北朝鮮沿岸では沿岸を警備する哨戒艇が脱出工作員を乗せているという小型高速艇を上司の命令で撃沈。さちしおが偶然、核テロの真相のカギを握ると思われる高速艇の乗組員を漂流中に救助するが、北朝鮮の一部勢力と中国軍の思惑により、さちしおを中国領海から北朝鮮領海へ追い込んで沈めようとする秘密作戦が始まる。さちしおを追うのは中国原潜漢級。静粛性に勝る海自潜水艦と水中速力に勝る漢級原潜との間で互いの艦の性能と知力を尽くした心理戦が始まる…。てな感じです。

 潜水艦の艦内や操艦の描写が凄くリアルで、海自の実際の艦長さんに相当な取材をしたのだと思います。中国原潜との闘いも互いの手の内の読み合いと裏のかき合いで手に汗握る展開。魚雷を簡単に撃たないところとか、最後の最後まで敵の裏をかいて戦闘を回避しようとするところとか、実際に海自の潜水艦がこうした状況に巻き込まれたらこうなるだろうな、というお話になってます。日本の海上自衛隊の能力って米軍も認める凄さですから。

 ちょっと残念なのは、潜水艦同士の闘いの描き方がリアルすぎる分、テロが起きた背景とかそれに暗躍した軍部や国際政治の駆け引きなど、物語のスケールを広げるための大きなドラマ部分が薄い気がしました。よくできた戦闘シミュレーションを見てるみたいな感じなのです。
 でも、この作品、映画化できそうな気がするなあ…。


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