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戦場のディーバ『真実のマレーネ・ディートリッヒ』 [映画]

 *映画の内容に触れていますので、未見の方は注意して下さい。

 最近の新聞にアメリカの文豪のヘミングウェーがドイツ出身の女優マレーネ・ディートリッヒに宛てたラブレターが公開されたってニュース出てました。さすがハリウッドの大女優で、交友関係のスケールがもはや「歴史的人物」の域です。でも、この映画見て、素顔もかなりスケールの大きな人だったんだなというのを知りました。
 どういうきっかけで見に行ったのか忘れましたが、東京のミニシアターは地味なドキュメンタリー映画なのに、泣いてる観客だらけで凄いことになってました。ファンの人が多かったからかな。正直言って、マレーネ・ディートリッヒというと、『ニュールンベルグ裁判』ぐらい(ほんの端役で出演)しか見てないんですが、DVD買ってしまいました。どっちかと言うと重い作品なんで買ってからはあまり見てないんですが…。

(日本公開は2003年)

 映画の宣伝文句が「戦場のディーバ」。「こんな時代だから…彼女の歌声を聴きたい」とかそんなコピーだったと思います。考えた映画会社の人もきっとディートリッヒのファンなんだろうなあ。本当に映画にぴったり。ちょうどアメリカのイラク戦争が泥沼になりかけている頃で、日本も自衛隊を出すかどうかでもめていた頃だったような気がします。アメリカの大女優のジェーン・フォンダはベトナム戦争に体を張って反対したことで知られますが、誰だったか大女優(シャーリー・マクレーンだったかな? うろ覚え)が「ディートリッヒに比べればかわいいものよ」と言ったとか。

 ディートリッヒはナチスが台頭する前のドイツに生まれて、映画女優として活躍するんですが、グレタ・ガルボと一緒に第2次世界大戦以前のアメリカで外国生まれのハリウッド女優として人気を得ます。ディートリッヒを気に入ったヒトラーが国民的女優としてナチスの宣伝のために利用しようとするんですが、毅然として断り、ナチスが支配するドイツとの開戦後もアメリカに残って戦時国債の宣伝に協力したり、前線を回って兵士の慰問公演をやるんですね。

 ベルリンにはお母さんや兄弟がまだ残っていて、自分の最愛の肉親の頭の上に落とす爆弾を作るための国債販売に協力し、祖国の同胞を殺すかもしれない前線の兵士のために歌を歌ったわけです。で、米軍の情報部が着目したのが、彼女の歌があまりに素晴らしく、ドイツ兵の戦意を喪失させること。それがあの有名な『リリー・マルレーン』なんですね。この歌はドイツ兵だけでなく、前線のイギリス兵にまで覚えられたほど戦場の若者の心をとらえたそうです。

 そのほか、映画にはいろんなエピソードが詰まってるんですけど、ベルリン陥落の時、米軍の幹部に頼んで、真っ先に母親に電話をかけて安否を確かめる彼女の肉声とか、戦後初のイスラエル公演で主宰者から「絶対に止めてくれ」と言われたドイツ語で歌うと、会場が雪崩をうったように涙に包まれた話、初のドイツ公演で市民からつばをはきかけられた話、晩年に暮らしたパリで人生を終えたディートリッヒがやがて帰り着いた祖国ドイツで市民に見送られるシーン…小さな映画館でしたけど、観客の涙腺はぼろぼろ。

 マレーネ・ディートリッヒのファンの人は知っている事実ばかりかもしれませんが、作品を見てると、その稟とした生き方の強さに圧倒され、映画のようなドラマチックな人生に感動してしまうのです。自由フランス軍の戦車隊に参加していた恋人ジャン・ギャバンの元へ戦場のまっただ中まで追い掛けていって再会するくだりとか、人生がそのまま本当の映画みたいです。恋愛にもおおらかな人だったらしく、きっといろんなスキャンダルもあったんでしょうが、ヘミングウェーの手紙の記事を読んで、映画見た時のことを思い出しました。


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